ハリス、ポップカルチャーの波に乗るか 歌手が「アイコンだ」と支持、自身の発言もミームに

Kayla Wolf / AP Photo

 アメリカのバイデン大統領が次期大統領選から撤退することを発表し、同時に民主党の次期大統領候補として支持したことを受け、カマラ・ハリス副大統領がにわかに注目を集めている。ネット上では、彼女のある発言に由来して、ココナッツのアイコンを使った支援の輪が広がっている。さらには、ポップシンガー、チャーリー・XCX(Charli XCX)の発言によって、ハリスがポップカルチャーのアイコンになりつつある。その詳細とは。

◆「ココナッツの木から落ちたとでも?」
 インスタグラムやX(旧ツイッター)などのソーシャルメディアで、ココナッツの木の実の絵文字や写真を使って、ハリスを支持するといった投稿が拡散している。ハリスがココナッツとともにミーム化されている背景には、昨年5月にホワイトハウスで開催されたヒスパニック系アメリカ人の公平な教育や機会を促進するためのイベントでの、彼女の発言がある。

 教育の公平と平等を促進するには、当事者である若者に重点を置くことは当然重要だが、彼らを取り巻くすべての人々、つまり両親、祖父母、教師、コミュニティのニーズも理解する必要があるという考えを述べた。それを伝えるため、自身がかつて母親に言われた言葉を引用し、「自分がココナッツの木から落ちてきたとでも思っているの?」と笑いながら話したのだ。

 この発言がティックトック上の12秒のサウンドバイトとして編集され、一気に拡散した。1万8000件もの動画が投稿され、なかには何千という「いいね」がついたものもあるという。今回、ハリスが民主党の次期大統領候補の最有力者として一気に注目されるなか、ココナッツのミームブームが再発した。

◆「カマラこそBRAT」発言と、ライムグリーンの拡散
 さらに、もう一つの出来事が、ハリスのポップカルチャーにおけるプレゼンスを後押ししている。バイデン大統領が次期大統領選からの撤退を表明し、ハリス副大統領を次期大統領候補に公認した21日、イギリスのポップシンガー、チャーリー・XCXが、「カマラこそBRAT(kamala IS brat)」とXに投稿した。

 bratというのは、ライムグリーンに解像度の低いフォントでbratとだけ書かれたカバーが特徴的な、彼女の最新アルバムのタイトルであり、今夏話題になっているポップカルチャーのテーマでもある。bratとは行儀の悪い子供を意味する単語だが、この文脈においてはある種の反骨精神と自信が垣間見られる。チャーリー・XCX自身は、bratガールの夏の必需品は「タバコと安いライター、ノーブラに白いキャミだけ」と説明する。清潔でやましいところはないという女性像に対して、悪びれずに真っ向から反発するような価値観だ。

 なぜハリスがbratなのか。初の黒人女性、初のアジア系アメリカ人として民主党大統領候補の最有力者に選ばれたこと、つまり彼女が体現する「新しさ」そのものがアイコン的、つまりbratなのかもしれない。過去、ハリスが愛用するコンバースのチャックテイラーが話題になったことがあるが、チャックテイラーで軽快に歩き回るということも、bratを象徴する要素の一つかもしれない。かつてのバラク・オバマがそうであったように、若者世代にとってハリスは「クール」な大統領候補として認識されつつあるようだ。

 ハリスの選挙陣営は早速このトレンドに乗り、Xのカバーをライムグリーンに変えた。そこにはチャーリー・XCXのアルバムカバーの同じスタイルで「kamala hq」書かれている。ハリスがbratだとしたら、彼女のありのままのスタイル、自信、ウィット、悪びれない姿勢が、若い有権者の支持を得るための原動力になるのかもしれない。民主党次期大統領候補が今後どのようにポップカルチャーと若者を味方につけていくのかに注目したい。

Text by MAKI NAKATA