生徒の性自認、学校が保護者に知らせることを禁止 米カリフォルニア州
アメリカ・カリフォルニア州は全米で先駆けてさまざまな政策や法律を導入する、最も先進的な民主党州として知られている。最近では、子供の性自認を拒否する親を児童虐待の罪に問うことを認める法律や、子供の性転換手術や治療を親の同意なしで認める法律などが施行されている。こうした非常に極端な法律に続いてこの7月、子供が性別や姓名を変更しても親に知らせることを禁止する新法が成立した。
◆子供のプライバシーを保護する名目
カリフォルニア州のギャビン・ニューサム州知事は15日、全米初の州として、学区が子供の性別・姓名の変更を保護者に通知することを職員に義務付けることを禁止する法案「AB 1955」、通称「セーフティ・アクト」法に署名した。
カリフォルニア州の一部の学区が、子供が性別を変更したいと申し出た場合、保護者に通知することを義務付ける方針を決定したことを受けて、同法は制定された。民主党の州当局者から、生徒にはプライバシーを守る権利があるとする反発が起きたのがきっかけだ。
この法案により、一部の幼稚園から高校までの学区が導入していた、生徒や児童が出生証明書や学校の記録に記載されているのとは異なる名前や代名詞を使いたいと申し出た場合、または、生来の身体の性別と異なる施設の利用やプログラムへの参加を希望した場合、生徒や児童の同意の有無にかかわらず保護者に通知することを義務付ける「強制的アウティング」(同意なしの性的指向や性自認を公表)規定が、無効になった。
ニューサム州知事の広報担当、ブランドン・リチャーズ氏は声明で「この法律によって、政治家や学校職員が家庭の問題に不適切に介入したり、家族がいつ、どのように個人的な会話を持つのかを管理しようとしたりすることを防ぐことが可能になります。つまり、子供と親の関係を保護することになるのです」と述べた(AP通信、7/15)。
◆反対派と擁護派1年の論争
保護者の権利を訴える保守的な教育委員会と、トランスジェンダーの青少年の成長を懸念するLGBTQ+活動グループとの1年にわたる論争に終止符が打たれた。
この法案を支持するのは、トニー・サーモンド州教育長、LGBTQ+擁護非営利団体トレバー・プロジェクト、州学校職員協会、州教職員組合など。一方、反対派には、マムズ・フォー・リバティ・サンタ・クララ郡、チノ・バレー統一学区、16人の共和党の州下院議員が含まれる。ビル・エッセイリ議員(共和党)は昨年、同法案に対抗するため、子供がトランスジェンダーであると判明した場合、保護者に通知することを学校に義務付ける法案を提出していた。
カリフォルニア州議会LGBTQ+党員集会・スーザン・エッグマン議長は「この法律によって、カリフォルニア州はあらゆるLGBTQ+の青少年のリーダーであり、安全な避難所であることが再確認された」と述べる(マーキュリー・ニュース、7/15)。
反対派は、この法律は親の権利を侵害するものだと非難する。アメリカン・リバティー・センターの最高経営責任者で創設者のハルミート・ディロン氏は「AB 1955条は、学校が過激なジェンダー・イデオロギーを子供たちに教え込む一方で、親にそのことを知らせないというとんでもない試みだ」と反対する(ロサンゼルス・タイムズ、7/15)。
◆イーロン・マスク反対 テキサスへ本社移転
サンフランシスコ統一学区にはすでに、生徒の書面による同意がない限り、教師や学校職員が生徒の性別や性自認を公表することを禁止する規定がある。
非営利のシンクタンクで平等擁護団体「ムーブメント・アドバンスメント・プロジェクト」によると、現在、トランスジェンダーの生徒を強制的に「アウティング」することを学校職員に義務付ける法律を可決した州は、アイダホ、ノースダコタ、アイオワ、インディアナ、テネシー、ノースカロライナ、サウスカロライナ、アラバマの8州になる。また、モンタナ、ユタ、アリゾナ、ケンタッキー、フロリダの5つの州では、学校における強制的な「アウティング」政策を推進する法律が可決されている。(マーキュリー・ニュース)
カリフォルニア州では昨年、LGBTQ+などの歴史的に疎外されてきた人々について書かれた教科書を禁止する学校区に罰金を科すという法律が成立している。
同州のセーフティ・アクト法の成立を受け、イーロン・マスク氏はX(旧ツイッター)に、このような法律が制定されれば、「子供たちを守るために家族や企業がカリフォルニア州を去らざるを得なくなる」とニューサム氏に警告したと投稿。「XとスペースXは本社をカリフォルニア州ホーソンからテキサス州スターベースに移転する」と述べた。
I did make it clear to Governor Newsom about a year ago that laws of this nature would force families and companies to leave California to protect their children
— Elon Musk (@elonmusk) July 16, 2024
マスク氏は以前よりトランスジェンダー問題について、オンライン上で苦言を呈している。