飲料に薬物入れられてないか調べるキットの提供、バーなどに義務付け 米加州

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 バーやクラブで注文したアルコール飲料に薬物が知らぬ間に混入され、飲んだ直後に意識が遠のき、気づいたら財布が盗まれていた。ドリンク・スパイキングという犯罪だ。増加するこの犯罪にしびれを切らしたカリフォルニア州は、ある大胆な対策を打ち出した。薬物を検知するキットを客に提供することをバーやクラブに義務付ける新法を施行した。

◆バー・クラブが薬物混入を検出できるキットを提供
 カリフォルニア州は7月1日より、酒類を販売するバーやナイトクラブなどの飲食店(タイプ48の酒類免許保有者)に対し、飲み物に薬物を混入させる「ドリンク・スパイキング」による性犯罪などを防止するため、酒に薬物が混入しているかどうか検知するキットを提供することを義務付けた。

 カリフォルニア州酒類管理局によると、AB1013法に基づき、店側はフルニトラゼパム(睡眠導入剤)、ケタミン(幻覚作用)、ガンマヒドロキシ酪酸(GHB)などの薬物を検出できるキットを提供しなければならない。州全体で約2400の免許取得者に影響が及ぶ。

 薬物検査キットは、試験紙かステッカーまたはストロー状のもので、適正価格で販売されるか、客に無料で提供される。

 また、バーの目立つ場所に「睡眠薬を盛られて性的暴行されないで! 薬物検査キットあり。詳しくは店員まで」と書かれた看板を設置することも義務付けた。

 この規制に違反しても刑事責任を問われることはないが、酒類管理局は、免許に対する行政処分を受ける可能性があると警告している。この規制は、2027年1月1日まで有効となる。

◆ドリンクの蓋提供など 義務化も審議中
 同法を立案した州下院のジョシュ・ローウェンタール議員(民主党)は、「性的暴行の大半は未報告なのです」と述べる。また、飲み物に薬物を混入させた人を捕まえることはできないかもしれないが、そのような行為をしないように意識を変えることはできる、と主張する。(KFMB-TV

 同議員は、「最近は、GHBやケタミンといった、人の意識を失わせる強力な薬物が使われているのです」と懸念している。彼のスタッフや議会関係者も、ドリンク・スパイキングの被害に遭ったという。(同)

 同議員によれば、すべてのバーやクラブに対し、客がドリンクの蓋を要求した場合、その蓋を提供することを義務付けるなど、ドリンク・スパイキングに取り組む3つの法案がほかにも立法手続き中だという。ほか2つは、客が薬物入りの酒を飲まされた可能性があると店員が判断した場合、店側に警察への通報や客への対応を義務付けることや、飲食店の酒類取扱トレーニングにドリンク・スパイキングの対応を盛り込むことなどが審議されている。(同)

 ドリンク・スパイクは増加しているが、それを示す統計上のデータを得るのは難しい。同議員事務所が調査したところによると、ロングビーチ警察は年間平均25件の被害届があるという(LAist、7/1)。

Text by 中沢弘子