「未来はプラントベース食」推進するデンマーク、打ち出した行動計画とは
デンマーク政府は昨年10月、プラントベース(植物由来)食品に関して世界初となる国家の行動計画を発表した。世界に先駆けた政策の内容とは。
◆バリューチェーン全体を強化
そもそも植物由来食品とは何か。行動計画には「植物、食用菌類、藻類、栄養価の高い微生物に由来するすべての食品を対象とする」とある。2021年、キノコや海藻を含めた植物由来食品のデンマーク国内の小売販売総額は320億デンマーク・クローネ(約7500億円)。別の統計データによると食品全体の売上額が約1600億クローネなので、植物由来食品の割合は2割程度と推測できる。この比率を押し上げて国内の食生活を植物由来食品に切り替えていくとともに、輸出にも注力していくという戦略で、そのために補助金を用意し、調査研究に対しての投資を行うとのことだ。
植物由来食品の需給を大幅に拡大させるためには、農場から食卓まで(Farm to Fork)、業界のバリューチェーン全体を強化する必要がある。行動計画においては、土地活用戦略から、製造、マーケティング販売、輸出、調査・イノベーション・開発まで、バリューチェーンの5段階に関しての施策が提示されている。たとえば、マーケティング販売に関しては、「すべての人に健康で、おいしい植物由来食品を提供する」という方針を柱に、調理に携わる人に対する教育の必要性や、国の食生活指針のさらなる普及などについて言及がある。政府は2023年から2030年までの間に6億7500万クローネ(160億円)の植物由来食品給付金(Plant-based Food Grant)を予算化している。昨年11月には、植物性タンパク質の開発、シェフ養成、情報発信など、36のプロジェクトに対して総額5820万クローネの資金援助が行われた。
◆プラントベース食の推進政策は次なるトレンド?
世界に先駆けるデンマークの政策だが、当然のことながら課題もある。現状、ヴィーガン食を実践するデンマーク人は約4万5000人程度との試算がある。これは人口の1%にも満たない。肉の消費量に関しては、年々減少傾向にあるものの、欧州の他国と比較すると遅れをとっているという指摘もある。植物由来食品業界を支援し、投資するだけでなく、畜産業界からの抗議行動も考慮する必要がある。
デンマークの政策が発表された直後、韓国も植物由来食品を推進する国家政策を発表し、代替プロテインの研究開発推進などの方針が示された。ほかにも、オランダ、イギリス、ドイツなどが植物由来食品の需給を拡大させるための投資計画を発表している。
デンマークの食料農漁業省長官は、行動計画の冒頭で「未来は植物由来食品だ」と断言している。植物由来食品への投資は、地球や人間の健康を改善するだけでなく、新しい雇用を生み出し、経済成長を促進する重要な要素でもある。今後、同様の政策が各国に普及していくことが期待される。