訴訟合戦に株価暴落 トランプ氏の「トゥルース・ソーシャル」が直面する危機
アメリカ・ニューヨーク市では15日、ドナルド・トランプ前大統領のいわゆる「不倫口止め料」裁判、正確に言えば「選挙資金法違反」裁判が開始された。アメリカでは大統領経験者が刑事事件の被告になるのは史上初めてで、トランプ氏はその不名誉な記録を作ってしまった。一方、トランプ氏はビジネス面でも火種を抱えている。それはト同氏が立ち上げたソーシャルメディアプラットフォーム『トゥルース・ソーシャル』の経営難と法的問題である。
◆株式公開で逮捕者や訴訟が続出
トゥルース・ソーシャルは、トランプ氏の支持者が集うプラットフォームとして、トランプ氏が2022年にリアリティ番組『アプレンティス』の出演者2人とともに創業したソーシャルメディアだ。その利用者は主に「MAGA」と呼ばれるトランプ氏支持者と、同氏や支持者の言動を観察するためのメディアや政治家、ジャーナリストなどに限定されており、米公共放送PBSによると、アクティブユーザーは現在およそ500万人程度と思われている。
トゥルース・ソーシャルを運営するトランプ・メディア・アンド・テクノロジー・グループ(TMTG)は3月末、特別買収目的会社(SPAC)「デジタル・ワールド・アクイジション」との合併を通じて米ナスダック市場に株式を上場。その後、経営や法的な面で数多くの問題が浮き彫りになってきた。
CNNによると、両社の合併についての内部情報を事前に入手し巨額の利益を得たとして、昨年6月に逮捕・起訴されたフロリダ州のベンチャーキャピタリスト3人が、4月3日に有罪を認めた。3人のうち1人はデジタル・ワールド・アクイジションの取締役の1人で、知人や同僚に合併についての情報を流していたという。
またNBCニュースによると、トゥルース・ソーシャル共同創業者の2人は2月、「トランプ氏が発行可能株式総数を1億2千万株から10億株に増やすことで共同創業者の株式を希薄化しようとした」と主張し、TMTGを提訴。その後トランプ氏側も2人を反訴するという泥沼に陥っている。
◆収支公開で明らかになった巨額の損失
その一方で、公開直後は高騰した株価は下がり続けている。3月26日の取引開始後に最高79.38ドルの値をつけたが、17日の終値は26.4ドルで、およそ3週間で67%下がったことになる。
この暴落の理由の1つはトランプ・メディアの経営状況である。CNNによると、同社は2023年に5820万ドル(約90億円)の損失を計上。一方で収益はわずか410万ドル(約6.3億円)だった。またCNNの別の報道によると、4月15日以降に株価が暴落した理由は、トゥルース・ソーシャルが今後、収益につながりにくいストリーミングに事業拡大することを公表したからだという。
現状でも巨額の損失が出ているのに、将来的にストリーミングに進出したとしても、利用者層が限定されているトゥルース・ソーシャルが利益を上げることは考えにくい。今後トランプ氏の数々の裁判が進行していくとともに、トゥルース・ソーシャルの経営も困難な状況を迎える可能性が高くなってきた。