エネルギー・気候変動対策に50兆円 米上院、「インフレ抑制法案」可決
米国上院議院で8月7日、インフレ抑制法案が通過した。4330億ドル(約58兆円)の歳出予算が盛り込まれた法案には、税制改革と医薬品価格改革を柱とする歳入計画と、財政赤字の削減、エネルギー・気候変動対策への投資といった歳出計画が盛り込まれた。その詳細とは。
◆民主党の結束が求められた法案
今回、米国上院議院で可決されたインフレ抑制法案(H.R.5376 – Inflation Reduction Act of 2022)は、バイデン大統領が打ち出す経済政策「ビルド・バック・ベター(Build Back Better)計画」に基づいた歳入・歳出法案となる。ビルド・バック・ベター計画は当初、新型コロナウイルス対策としての米国救済計画(American Rescue Plan)、インフラ投資や気候変動対策などを盛り込んだ米国雇用計画(American Jobs Plan:AJP)、社会保障などに関連する米国家族支援計画(American Families Plan:AFP)の3つで構成されていた。米国救済計画に関しては2021年3月に法律として施行し、AJP、AFPに関しては、議論と交渉が続けられていた。
その後、AJPのインフラ投資関連の計画は超党派によるインフラ投資・雇用法(Bipartisan Infrastructure Law, Infrastructure Investment and Jobs Act)として2021年11月に施行。AJPの残りの部分である気候変動やヘルスケア関連の改革などの関連項目はAFPと統合されて、ビルド・バック・ベター法案となった。法案は民主党が過半数を占める下院を通過したものの、ウエスト・ヴァージニア州の民主党上院議員ジョー・マンチンの反対により進展が阻まれた。
現在、米国上院は定数100のうち、民主党、共和党ともに50議席と並んでいる。共和党議員の全員がこの民主党法案に反対しているため、民主党が法案を可決するには50人の議員全員が合意し、その後、議長を務めるハリス副大統領が賛成票を投じる必要がある。マンチン議員は盛り込まれた計画がインフレを引き起こすなどとし、これまで法案に反対してきたが、最終的に合意し、もともとAJP、AFPに盛り込まれていた内容が紆余曲折の改訂を経て、インフレ抑制法案という名前の法案で上院を通過した。
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