駐日米大使エマニュエル氏、駐中国大使バーンズ氏とは?
ジョー・バイデン大統領は、長きにわたり国務省の重要ポストを務めたニコラス・バーンズ氏を駐中国大使に、元シカゴ市長のラーム・エマニュエル氏を駐日大使に指名している。ホワイトハウスは8月20日、両候補者を正式に発表した。
エマニュエル氏は下院議員を3期務めており、バラク・オバマ政権では初代首席補佐官に、ビル・クリントン政権では上級補佐官に就いた。
大統領が中国を注視しながら太平洋のパートナー諸国との関係強化を急ぐなか、上院で承認が得られれば、エマニュエル氏は日米関係のきわめて重要な局面で日本に派遣されることになる。
バイデン大統領は、エマニュエル氏を運輸長官に指名することも考えていた。しかし黒人が多数派を占める地区での警察活動や学校の閉鎖など、同氏がシカゴ市長を務めていたころの施策を問題視する民主党リベラル派の一部から強い反対の声が上がり、最終的には長官候補から外すこととなった。
エマニュエル氏は大統領選でバイデン氏の非公式アドバイザーを務めており、過去30年にわたり民主党政治に絶大な力をふるってきた。
同氏はバラク・オバマ元大統領の初代首席補佐官を務めるため議会を離れ、大統領が目玉政策である医療保険改革法を先導し、グレート・リセッション後の大型景気刺激策を促進する手助けをした。
2006年には民主党の資金調達をおもに担いながら、選挙で地滑り的な大勝利を収める立役者となった。この勝利により同党は12年ぶりとなる過半数獲得を達成し、ナンシー・ペロシ氏が史上初となる女性の下院議長に就任した。
市長としては、アメリカで3番目に大きな市の高校卒業率を過去最高の水準まで高め、複数の大企業のシカゴ移転を誘致したことをとくに重要な功績として強調している。
しかし市長在任中には、殺人率の急増や、シカゴ教員組合との関係悪化、年金不足額の増大などにより批判を受けた。
2018年、エマニュエル氏は市長として3期目を目指すことはないと発表した。このときシカゴ市では、10代の黒人男性であるラクアン・マクドナルド氏を道で射殺した白人警官の裁判が控えており、大きな注目が集まっていた。
2014年にマクドナルド氏が16発の銃弾を受け死亡した事件は、全国各地で発生していた警官による黒人男女の射殺事件のなかでも大きな注目を集めた。このような事件を受け、国民からは強い怒りの声が上がり、黒人コミュニティでの警察活動について活発な議論が行われるようになった。
捜査が続くなか、エマニュエル氏は2015年に再選をかけた選挙にのぞむが、発砲の様子を収めた警察の動画を公開することには反対した。
エマニュエル氏が2期目の再選を果たした後、数ヶ月におよぶ訴訟の末に裁判所は市に動画を公開するよう命じた。動画の公開を受け、同氏とシカゴの黒人コミュニティとの関係は緊張した。
エマニュエル氏は今回の声明で、何十年にもわたりバイデン大統領とともに働いてきた実績や、日米関係の重要性を強調している。
エマニュエル氏は、「日米の連携は、自由で開かれたインド太平洋の平和と繁栄の要です。地政学的にもっとも重要な地域のひとつにおいて、世界でもっとも重要な同盟国のひとつである日本とともに、我が国を代表することを誇らしく思います」と述べている。
バイデン大統領がバーンズ氏を指名したのは、ベテラン外交官を大使とすることで、外交的にもっとも困難といっても過言ではない課題に立ち向かうためだ。大統領は中国について、経済面ではアメリカの最大のライバル国であり、安全保障の面では懸念が高まっていると繰り返し述べており、政権発足後すぐから太平洋の外交政策に軸を置いてきた。
バーンズ氏は、ジョージ・W・ブッシュ元大統領のもとで国務次官を務め、駐ギリシャ大使、北大西洋条約機構(NATO)大使を歴任。国務省の報道官も担当し、ビル・クリントン政権からジョージ・H・W・ブッシュ政権にまたがる5年間には、ホワイトハウスの国家安全保障会議に在籍した。
外交官としてはエルサレムの総領事館(1985~1987年)や、在エジプト大使館(1983~1985年)、在モーリタニア大使館(1980年にインターンとして在籍)などに務めた。
バーンズ氏は現在、アスペン戦略グループとアスペン・セキュリティ・フォーラムのエグゼクティブディレクターを担当している。同時に、ハーバード・ケネディスクールで外交実務と国際関係の教授も務めている。
上院で承認が得られれば、バーンズ氏は困難な状況下で中国を訪問することとなる。
米情報機関は現在、新型コロナウイルスの発端を特定するため90日間のレビューを進行中だ。その結果、中国の研究所にたどり着く可能性もある。
大統領は中国政府による香港の民主主義活動家らに対する弾圧や、新疆ウイグル自治区におけるウイグル族など少数民族への人権侵害、アメリカ側が不公平で強制的だと訴えている貿易慣行などを理由に、習近平国家主席への圧力を強めている。
バイデン政権はまた、メールサーバーソフトウェア「マイクロソフト・エクスチェンジ」に対する大規模なハッキングを援護したとして中国政府を非難しており、アメリカの貿易機密やテクノロジー、疾病研究を盗もうとした罪で中国国籍の4人を起訴した。中国側はハッキングの非難を否定し、米政府に中国市民への起訴を取り下げるよう求めている。
By AAMER MADHANI Associated Press
Translated by t.sato via Conyac