トランプ政権、郵便投票阻止のため郵便事業を妨害? 各地で提訴

Robert Bumsted / AP Photo

 大統領選まで2ヶ月半を切ったアメリカ。今年は新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、郵便投票(不在者投票含む)を希望する有権者が増加している。世論調査でジョセフ・バイデン前副大統領にリードを許しているドナルド・トランプ大統領は、これまで郵便による投票を阻止するために躍起になっていたが、ついにアメリカ郵便公社自体への資金拠出をストップすることで郵便投票を阻止しようとしていることを自ら明かした。

 政治情報サイト『ポリティコ』によると、トランプ大統領はFOXニュースのインタビューで、民主党が提案した新型コロナウイルス救済案で同党が郵便投票と郵便公社の救済資金を要求していることに言及し、「(経営難に陥っている)郵便公社が何百万通もの郵便投票を扱えるように金を要求している」「この2つを(民主党が)得なければ、郵便投票はできないということだ」などと発言して、郵便投票を阻止するため、経営難が続いている郵便公社に資金を投入しないことを示唆した。

◆郵便選別機を撤去、業務効率の悪化狙いか
 現在、アメリカ郵便公社の長官の座に就いているのは、共和党員でトランプ氏の大口献金者としても知られるルイス・デジョイ氏である。USAトゥデイによると、デジョイ氏は今年6月に長官就任後、郵便局員の残業を削減し、作業が遅れている場合は翌日に持ち越すことを指示。また局員に対し、人員不足などですべての郵便が配達できない状況になれば「郵便は配達されない」などと発言していたことが明るみに出た。実際ABCニュースによると、郵便公社は全米46州で投票用紙を郵便で各州の期日までに投函しても「選挙前に配達できないかもしれない」という警告を発している。

 デジョイ氏はまた、郵便選別機や街中に設置されている郵便ポストの撤去を実施。ツイッターには、撤去されて倉庫に入れられたり、プラグを抜かれた選別機や、鍵をかけられた郵便ポストの写真が多数投稿されている。デジョイ長官は、大統領選を含む総選挙を11月に控えて、今後大量の郵便投票(不在者含む)が投函され選挙日以前に配達されることが期待されるなか、「改革」と称して故意に郵便業務の効率を悪化させることで、郵便投票を阻止しようとしているような印象がある。

Text by 川島 実佳