トランプ氏、大統領選延期を提案 郵便投票を「不正」と主張

Andrew Harnik / AP Phto

 トランプ氏は選挙延期を軽く提案することで人々の反応を見ようとしたのかもしれないが、この発言に対して民主・共和党議員はすぐさま拒否反応を起こした。民主党のナンシー・ペロシ下院議長はツイッターで、選挙日程の決定権は米議会にあるという米国憲法第2条第1章を投稿しトランプ大統領をけん制。NBCニュースによると、チャック・シューマー上院少数党院内総務は、トランプ大統領がこのような発言をすることにより、新型コロナウイルスの感染抑制失敗から人々の注目をそらそうとしていると述べた。またUSAトゥデイ紙は、共和党のミッチ・マコネル院内総務もトランプ氏の発言に反応して、何があろうと選挙は11月3日に実施されると述べたと報道している。

◆郵便投票の75%はバイデン氏
 一方、共和党のほかの政治家はトランプ大統領が郵便投票を批判していることを苦々しく思っているようだ。トランプ大統領を信じるのはもちろんトランプ氏および共和党支持者であり、民主党支持者ではない。共和党支持者が郵便投票を否定的に思い投票しない場合、票を失うのは民主党ではなく共和党である。
 
 CNNによると、共和党の世論調査員がある激戦州で調査を行ったところ、郵便投票を予定している人の75%がバイデン前副大統領に投票すると答えており、トランプ大統領は15%のみだったという。同記事でトム・リッジ前ペンシルバニア州知事は、郵便投票に反対することは「共和党にとって非常に危険だ」「(同党にとって)信じられない損失となる」と指摘している。

 トランプ大統領が期待している選挙延期の可能性がほぼ皆無と言っていいいま、同大統領は郵便投票の信ぴょう性を攻撃することでかえって自分自身と共和党支持者を投票から遠ざけているようだ。前出のCNNの記事によると、共和党員はトランプ政権に郵便投票への攻撃をやめるよう意見しているという。トランプ氏が自分の発言が自分自身に悪影響を及ぼすことを理解すれば、今後意見を180度翻して逆に郵便投票を勧める可能性も十分にある。

Text by 川島 実佳