新型肺炎:自国民・世界の安全より国家のイメージ……被害を拡大させた中国の検閲

Cheng Min / Xinhua via AP

 新型肺炎の感染拡大で、中国政府は感染の震源地ともいえる武漢市を閉鎖するなど、対策を次々と取っている。一党独裁ならではの大胆な措置には評価もある一方、党の権威を守り民衆をコントロールするために行われた過度な検閲が事態を悪化させたと批判されている。

◆指導者の一声で決まり 共産党ならではの大胆対策
 英スペクテイター誌の記者のシンディ・ユー氏は、武漢から遠く離れた故郷の南京でも感染者が出ていると述べる。デジタルで繋がった中国社会には、Wi-Fiがスーパーからバスの中までどこにでもあるため、南京市はそれをフル利用し、感染者がいつどこで買い物をしたのか、いつどの交通機関を利用したのかまで、その足取りを細かく公表しているという。ロンドンでも地下鉄の乗客の追跡は可能だが、プライバシーの観点から情報公開はできないだろうとしている。

 同氏はまた、中国政府がロンドンより人口の多い武漢を閉鎖したこと、専門病院の建設を超突貫工事で始めたこと、移動の規制が市民の抵抗を受けることなく多くの都市で始まったことに注目。市民の移動の自由への懸念や、病院の建設許可申請などを飛び越して、感染症を制御しようとするのが中国スタイルだと述べている。

Text by 山川 真智子