階級ではなく年齢、英総選挙の結果をわけたもの 高齢者が導いた保守党勝利

Stefan Rousseau / PA via AP

◆世代間ギャップ深刻 3つの断層とは
 ガーディアン紙は、今回の選挙が示したのは年配者と若者の分断だとする。これまで階級による分断が見られたが、いまや年齢は階級以上に重要だとしている。年配層が保守党を支持し、若者がリベラル政党を支持した理由の一つは、ブレグジットへの態度の違いがあると見られる。しかし同紙は、アシュクロフト世論調査の結果から、それ以外にも若者と年配者では投票のポイントがまったく違っていたと指摘する。

 同調査結果では、若い世代が候補者を選ぶ際に重視したのは貧困や生活費の上昇への取り組みだった。一方65歳以上では、ほかの要素に比べ生活費の問題は関心が薄かった。65歳以上の20%が重要と答えた移民問題については、18歳~24歳の5%しか重視していなかった。さらに18歳~24歳の32%が重要だとした気候変動の問題に対しては、重要だと答えた65歳以上は13%しかいなかった。

 スローム氏は、イギリス政治には三つの世代間の断層があると述べる。一つ目として、年配層と異なり若い層は多額の公共支出や国の介入を支持し、大きな政府を求めることを上げる。二つ目は、年配層が移民を国家的問題とするのに対し、若い世代は文化的多様性を支持し、移民に寛容なことだ。三つ目は、若い世代が環境問題に敏感で、自ら行動を起こしていることだとしている。

◆米大統領選から有権者に変化? 鍵を握る若い世代
 スローム氏は、教育のある若い世代が左寄りの世界市民的価値観を持ち、社会的に保守的な候補者や政党に反対するという傾向は、多くの国々でも共通してみられると指摘している。

 米ニュースサイト『Axios』は、アメリカの2020年の選挙で初めて有権者となるジェネレーションZと呼ばれる世代に注目する。彼らは1996年以降に生まれた若者たちで、サイレント・ジェネレーションと呼ばれる1928年から1945年の間に生まれた世代を人数で上回ることになる。さらに、黒人ではなくヒスパニックがマイノリティとして最大の割合を占める世代だ。

 ジェネレーションZは、2020年の有権者の10%を占め、少し上のミレニアル世代と合わせれば、有権者全体の37%になる。この世代は、これまで以上に白人が少なく、教育レベルが高く、都市に住むものが多いのが特徴だという。ミレニアル世代同様、ジェネレーションZはリベラルで社会の変化にオープンだとされる。彼らの世代がもたらす人口動態上の変化が、新たな声を届け、政治の地図を塗り替えることになるのではと期待されている。

Text by 山川 真智子