世界最年少34歳の女性首相が誕生、フィンランド 目立つ女性政治家の活躍
フィンランドでは、いろいろな意味で型破りな新政権が生まれようとしている。
運輸・通信大臣のサンナ・マリン氏(34)は先週、与党・社会民主党から次期首相に選出された。12月10日に首相就任を果たし、世界で最も若い政権リーダーとなった。
さらに異例なのは、マリン氏が率いる4つの連立政党の党首も全員女性で、しかもそのうちの3党首が30代前半であることだ。マリン氏自身の生い立ちも型破りである。シングルマザーの元で育てられ、母親が別の女性と付き合っていた頃は疎外感を味わっていたという。
ヘルシンキ大学でジェンダー学を教えるエリナ・ペンティネン講師によると、これほど多くの女性が表舞台に立つのは、年配の男性が権力を握ることの多い世界の基準と照らし合わせても、また男女平等が世界で最も進んでいるといわれるフィンランドでも「異例」だという。「実に驚くべき状況になりそうだ」とペンティネン氏は話す。
4月の議会選挙でフィンランド社会民主党は第1党になった。次期首相になるマリン氏の前任者であるアンティ・リンネ氏は先週、郵便職員によるストライキを発端とする政治的な混迷のなかで辞任を表明した。来夏に開かれる党大会まで、リンネ氏は党代表にとどまる意向を示している。
ペンティネン氏によると、マリン新首相は気候変動への対処、医療をはじめとする世界的にも有名な社会保障制度の維持、若者へのアプローチで積極的な政策を推進するリーダーとしてのスキルを持ち合わせる有能な政治家として知られている。
ほかのヨーロッパ諸国と同じように、フィンランドでも極右のポピュリスト勢力が台頭しており、4月の選挙では国粋主義的な真のフィンランド人党(フィン人党)が躍進した。だが中道左派の複数政党が過半数の議席を確保し、連立与党を組んでいる。
「トランプ大統領やポピュリズムの時代にあって、今回の動きがポピュリストに対する新たな動きの徴候になることを願っている」とペンティネン氏は語る。
あるジャーナリストがフィンランドのヘルシンギン・サノマット紙に5人の女性が並ぶ様を写真つきで投稿したところ、ネット上で多くの関心を集めた。政界で女性の力が向上していることを視覚的に示す内容だったからだ。
マリン氏が首相になるまで、現在世界最年少の首相はウクライナのオレクシー・ホンチャルク氏(35)だ。ただ、マリン氏のその地位は短命かもしれない。31歳でオーストリア首相に上り詰めたセバスチャン・クルツ氏(33)が9月の選挙で勝利し、新たな連立政権樹立に向けた話し合いを続けており、首相の座に返り咲く可能性があるからだ。
ポピュリズム台頭に立ち向かう女性リーダーの小さな集団にマリン氏は属している。この集団にはスロバキアのズザナ・チャプトヴァー大統領(46)もいる。今年の選挙で、中央ヨーロッパで広がるポピュリズムとナショナリズムの流れに強く抵抗した進歩主義者だ。
ニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相(39)同様、マリン氏も昨年女の子を生んだばかりの母親である。2015年から議員を務めている同氏は党副議長で、間もなく退陣する現政権では運輸通信大臣の要職にある。
マリン氏は12日と13日にブリュッセルで開かれたEU首脳会議にフィンランドを代表して参加し、新政権は議会の承認を得た。フィンランドは今年末まで、持ち回りのEU議長国となっている。
社会民主党以外の連立与党の党首は、中央党のカトゥリ・クルムニ氏(32)、左翼同盟のリ・アンダーソン氏(32)、緑の党のマリア・オヒサロ氏(34)、最年長はスウェーデン人民党のアンナ=マヤ・ ヘンリクソン氏(55)となっている。連立与党はフィンランド議会の定数200のうち、過半数を優に超える117議席を有している。
中央党は9日、クルムニ党首が新政権の財務大臣に就任すると発表した。
フィンランドの女性首相はマリン氏で3人目となる。この数十年で北ヨーロッパ地域では女性の政治家が目立つようになり、スウェーデンでは政党党首の半数が女性となっている。デンマークでは9つの政党のうち、4党の党首を女性が占める。
メッテ・フレデリクセン氏が6月にデンマークの首相になったほか、エルナ・ソルベルグ氏は2013年からノルウェー首相を務めている。
アイスランドではヴィグディス・フィンボガドゥティル氏が1980年に3人の男性候補を破って大統領となり、民主的に選出された初の女性国家元首となった。
By JAN M. OLSEN and VANESSA GERA Associated Press
Translated by Conyac