再燃するフェイスブック政治広告問題 虚偽広告を許可、トランプ氏との会談後に

Andrew Harnik / AP Photo

◆フェイスブック、将来への危機感から右傾か
 フェイスブックによる虚偽政治広告容認の決定は、フェイスブックのCEO、マーク・ザッカーバーグ氏がワシントンD.C.でトランプ大統領と会談した後に行われた。同大統領は9月19日、ツイッターで「今日、大統領執務室でフェイスブックのマーク・ザッカーバーグ氏と会談した」と短く投稿。その後すぐに同社の政治広告に関するポリシーが変更されたことから、この会談で広告に関する何らかの同意があったのではないかと言われている。

 米IT系情報サイト『The Verge』は、ザッカーバーグ氏が7月の社内会合で、巨大IT企業を分割する計画を持つウォーレン上院議員が大統領に就任した場合、「フェイスブック存在の脅威になる」と発言したテープを入手し、10月1日に一部音声をサイトで公開した。同サイトはテープに録音されたザッカーバーグ氏の発言全体の書き起こしも掲載しているが、それを見る限り、ザッカーバーグ氏がウォーレン氏を含む将来的な民主党の政策に危機感を覚えていることは間違いないだろう。

 ザッカーバーグ氏の発言、そしてフェイスブックの虚偽政治広告容認に関して反発の声を上げたのが、当のエリザベス・ウォーレン上院議員である。CNNの報道によると、ウォーレン氏は11日、フェイスブックのポリシーを逆手に取り、フェイスブック上に「マーク・ザッカーバーグとフェイスブックが2020年の大統領選でトランプ氏を推薦した」という虚偽の広告を故意に出した。

 またウォーレン氏は17日にツイッターでも、「フェイスブックは積極的にトランプが嘘や間違った情報を拡散することを手伝っている。フェイスブックはすでにトランプが当選することを助けた。彼らはまたそれを繰り返し、しかもそこから利益を得るかもしれない」と述べている。

 一方、米政治ニュースサイト『ポリティコ』は14日、ザッカーバーグ氏が共和党員や右派ジャーナリストとカリフォルニア州の自宅で会合や夕食会を開いて対話していると報道。同サイトによると、トランプ大統領はソーシャルメディアサイトが左派寄りに偏っているとして訴えると発言している。

 ザッカーバーグ氏は政府を敵に回さないために、いままでフェイスブックを含むソーシャルメディアサイトに否定的な姿勢を示してきたトランプ氏や共和党員を喜ばせることで事態の鎮静化を図っているのかもしれない。しかし同社のこのような姿勢は、2020年の大統領選を含む総選挙で民主党が圧勝する結果となれば、かえって裏目に出ることは間違いないだろう。

Text by 川島 実佳