香港と本土結ぶ大橋、持つ政治的な意味合い 香港民主派からは懸念も
10月23日、中国本土と香港を結ぶ世界最長の海上大橋が開通した。工学技術の偉業による経済的、政治的な意義は計り知れない。
広東省の珠海市で開かれた式典には、中国の習近平国家主席が出席し、特別行政区の香港とマカオへつながる全長55kmに及ぶ橋の開通を宣言した。3都市の指導者たちが見守るなか、習国家主席の背景には、スクリーン上に映し出された花火が打ち上げられた。
総工費200億ドルの橋は、大幅な工事の遅れや予算超過の問題を抱えながら、着工からおよそ10年かけて完成した。中国の製造業における要として中核をなす珠江デルタ内を船が往来できるよう、橋の一部は海底トンネルとなっている。
橋の開通によって、数時間を要した珠江デルタの横断が30分程度へと短縮される。中国はこの地域の結びつきを強め、今後の経済発展の牽引役となることに期待を寄せる。10月24日より一般の通行が開始されるが、割当制度の下で発行される許可証が求められ、規制は厳しい。
中国本土と香港間の物理的なつながりが橋の開通により形成された。香港はアジアにおける金融経済の中心地である。1997年にイギリスから中国へ引き渡され、以降50年間は、香港独自の法や経済システムを継続させることが保証されている。
香港での政治的自由化を求める声を拒絶してきた習政権にとって、橋の開通がもたらす政治的な意味合いは大きい。「一国二制度」合意が2047年に終了する前に、市民の自由に対する中国政府のさらなる締め付けが懸念されている。
橋が開通する1ヶ月前には、香港と中国本土を結ぶ新高速鉄道が開通し、別ルートでの近道が敷かれている。この鉄道により移動時間が大幅に短縮されたが、終着駅となる香港駅内では中国本土の法律が適用されるため、中国政府による影響力が強まることへの懸念が高まっている。
民主化を支持する香港の政治家であるクラウディア・モー氏によると、この橋がもつ政治的意味合いは、実際の有用性をしのぐものであるという。
「本来これは必要のないものです。香港はすでに、陸、空、海を通じてあらゆる方法で中国本土とつながっているのですから」と、モー氏はAP通信に語った。
「それでもやはり、中国政府はこの橋を必要としているのです。香港の人々に対し、この壮大な橋を通じて母国と繋がっていることを思い起こさせるための、政治的シンボルもしくは象徴として……いわゆるへその緒のようなものなのです」
一方で、珠海での反応は、経済発展と国家の威信についての発言が多かった。
航空機パイロットのリウ・ガン氏は、香港やマカオと親交を深めている中国本土を象徴する橋の開通を待ち望んでいた、と話す。
「橋の開通で、私たちはさらに緊密な関係になり、経済的にも他の面においてもより自由になることでしょう。私たちは今、一つの家族です」と、リウ氏は22日の午後、散策がてら橋梁の写真撮影を行い、このように述べた。
不動産業者であるラ・フォンチ氏は、橋について、中国の経済成長と工学技術の優れた能力に言及した。
「中国の国民にとっての誇りです。愛国心をもつ中国人が皆、この素晴らしい技術の賜物を見に来られれば、と思います。海外からもぜひ見に来てほしいですね、歓迎します」
By DAKE KANG, Associated Press
Translated by Mana Ishizuki