一時的なサマータイム導入、ソウル五輪では国民に不満も 懸念される負の影響
◆幾度も検討されたが実現せず ネットでは反対多し
ロイターは、戦後占領軍の下で一時的に経験したものの、日本はサマータイムを採用していない数少ない主要経済国の一つだと述べる。ただ、1970年代、2000年代初期に省エネのステップとして議論されていたと伝えている。2011年の東日本大震災後の電力不足で再度議論されたが、結局導入には至らなかった。
サマータイム導入は、五輪招致以前から経済効果という面で注目されていた。第一生命経済研究所の首席エコノミスト、永濱利廣氏は、レジャー、食品、ホテル業界が主に恩恵を受けるとし、消費を伸ばすことで7000億円の経済効果があるとする。その一方で、ソフトウェアの問題や、人々が体内時計を調節することの苦労などが、負のインパクトとなる可能性もあるとしている(ブルームバーグ)。
ロイターは、ネット上では早くも反対の声が上がっているとし、サマータイムで始業時間が早まっても、明るいうちから退社できず、結局暗くなるまで働くことになりそうだというソーシャルメディアで多く見られる反応を紹介している。さらに実際に1987年と1988年にソウル五輪のためサマータイムを導入した韓国の例にも言及し、1日が長くなったことに適応できないという不満、また海外のテレビ中継のために導入されたことへの後味の悪さが、多くの人に広がったと解説している。
◆他にできることはないのか? 導入前にさらなる議論を
さて、東京五輪で暑さの影響がもっとも心配されるスポーツはマラソンだが、お天気情報サイト『ウェザー・ネットワーク』は、参加するランナーへのアドバイスを掲載している。千葉大学の研究チームが分析したところ、東京五輪のマラソンコースでは、往路では道路の右側を、復路では左側を走ったほうが涼しいことが分かったという。これはコースがだいたい西から東に延びており、右側に比較的影ができやすいためで(復路は逆)、ランナーは日陰を走ることで、体感温度で最大8度涼しく感じるらしい。
研究チームはまた、熱中症などのリスクは午前8時を過ぎると急激に高まるため、午前9時までにレースを終える、または午後7時以降にレースを始めるのが、最も安全だと結論づけている。
マラソンだけを取れば、わざわざサマータイムにしなくても、日陰を増やしたり、開始時間を調整したりすることで解決できそうに思える。経済活性化や省エネといった長期的な目標があるのなら別だが、数週間の五輪のために、国民全体を巻き込むサマータイム導入には、さらなる議論が必要だろう。
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