銃乱射事件後のお決まりのパターン 議会で議論盛んも成果なし
昨年の秋に発生したラスベガスでの銃乱射による大量無差別殺人事件の直後、共和党議員と民主党議員は銃規制法の強化に関する議論について重い腰を上げ始めた。4ヶ月後、下院または上院の審議を通過した唯一の銃規制法は、規制強化どころか銃の所持者への制限を緩和するものだった。
ラスベガスで10月に起きた58人が死亡した銃乱射事件と、大量殺戮を伴う他の銃乱射事件がこの議論に拍車をかけたが、共和党の支配下にある議会の下で、銃規制がさらに緩和される方向に向かっている流れに対する影響はほとんど無かった。フロリダ州の高校で2月14日に発生した銃乱射事件では17人が死亡したが、銃規制の緩和の方向に変化の兆しはわずかしか見られない。
2月15日、国会議事堂で交わされた会話も、お決まりのパターンに終始した。多くの民主党員が銃規制の強化を再び要求し、その一方で、共和党員は銃撃犯容疑者の精神衛生状態に注目した。
「人の親として、当局が私の子供たちの安全を真剣に受け止めようとしないことに激しい戦慄を覚えざるを得ない。そして、南フロリダ在住の大勢の親たちも同じ思いを抱いているに違いない」と、銃規制の強化を先陣に立って主導するコネチカット州民主党員、クリス・マーフィー氏は言った。
ラスベガスでの銃撃事件を受け、マーフィー氏と民主・共和両党の他の議員たちは、半自動ライフルを機関銃のような速射ができるようにするバンプ・ストックという装置を禁止するよう求めた。
しかしその努力も虚しく、この要求は共和党の指導者たちの強固な反対によってすぐに立ち消えとなった。代わりに、共和党が支配する下院は12月に法案を承認し、合法的に銃を隠して携帯したまま州境を越えて移動することがこれまで以上に容易になった。
銃器を隠して携帯する、という全米ライフル協会の最優先課題である方策については、銃の所有者は、州が発行した所持許可証があれば、銃器を隠して持つことを許可するいずれの州にも拳銃を持ち込むことができるようになる。
法案は、11月にテキサス州の教会で26人が射殺された別の銃乱射事件への対応として、FBIが管理する禁止銃器の購入者データベースを強化する規定が盛り込まれている。
下院議長のポール・ライアン氏は2月15日、精神病患者の銃器所有の禁止を目的とした法律をはじめとして、既存の法律が適切に機能しているかどうかについて議会はもっと焦点を当てるべきだ、と言った。
「私たちは、両陣営の一方のみを支持したり、政治的に対立したりすることをなるべく避けるべきだ。代わりに一致団結するべきだ」というライアン氏の声明は、多くの共感を得た。フロリダ州の銃による大量殺人は、今年になって学校で発生した18件目の銃乱射事件である。
ドナルド・トランプ大統領は、哀悼の意を表し、「精神の健康と保健に関わる数々の難問に果敢に取り組む」と国民に向けて厳粛に約束したが、銃については一切の言及を避けた。
19歳のニコラス・クルーズ容疑者は、素行不良のティーンエージャーであり、ソーシャルメディアにも迷惑な投稿を繰り広げていた。フロリダ州ブロワード郡のスコット・イスラエル保安官は、クルーズ容疑者はフロリダ州のマージョリー・ストーンマン・ダグラス高校を「懲罰的な理由で」退学処分になっていた、と話した。
フロリダ州のビル・ネルソン上院議員は、この悲惨な銃撃死傷事件を受け、「もうたくさんだ」と声高に言った。
銃による暴力の是非を問うのはまだ早過ぎる、と語る人たちに対し、「それでは、いつなら良いのだ? あと何回、こういう悲惨な銃乱射事件が必要なのだ? あと何人くらいの人が犠牲になれば良いのだ?」とネルソン議員は詰問した。
ネルソン議員と他の民主党員は、議会は精神疾患について議論するにとどまらず、何らかの行動を起こさなければならない、と言った。そして、「根本的な原因を究明しよう。他人に危害を及ぼすような武器や銃器を私たちの街から追放しよう」と呼び掛けた。
告訴されたフロリダ銃乱射事件の容疑者が使用したのは、自身が所有していたAR-15というライフル銃であり、昨秋、ラスベガスとテキサスで発生した銃乱射事件で使用されたものと同じである。さらに、このAR-15は、フロリダ州オーランドのナイトクラブ、そしてコネチカット州ニュートンのサンディフック小学校で起きた銃乱射事件でも使用された。
スティーヴン・マヌーチン財務長官が事前に用意された答弁以外のコメントを述べるのは稀なことではあるが、同長官は、トランプ大統領と閣僚たちに銃を用いた暴力についての適切な対応を協議するよう働きかけてみる、と語った。
大統領との予算審議の証言の中で、マヌーチン財務長官は学校での銃乱射事件を悲劇と呼び、「議会に対し、この問題に目を向け、対策を検討するように促す」と言った。
マヌーチン財務長官の発言は、銃暴力抑止のための法制定や追加予算には消極的な議会の姿勢とは真っ向から対立しているように思われた。
他の多くの共和党員たちは、今ではすっかりお馴染みとなった台本に従った。
ケンタッキー州共和党員のミッチ・マコーネル上院多数党院内総務は、黙祷を捧げるよう求め、「このように残虐で無意味な暴力行為は、不道徳である、として片付けるには余りある」と言った。
一方で、民主党は、銃購入者の身元調査をさらに強化し、銃暴力を調査する特別委員会の招集を新たに求めた。
カリフォルニア州民主党員であるマイク・トンプソン下院議員は、国民は銃の危機に晒されている、と言い、「多くの人が殺害される銃乱射事件が発生しないと、施策の方向転換は行われない」と同議員は憤る。
トンプソン議員は、相次いで発生した数多くの銃撃事件に対し、共和党が適切に対処できなかったことを非難し、「もし私が共和党員だったならば、自ら率先してこの問題に取り組もうとしないことに困惑と羞恥を隠し得なかったであろう」と言った。
ライアン下院議長は、銃器を隠し持って所有できる範囲の拡大を認める法律を制定することは優れた「自己防衛」措置であるとして、おざなりな身元調査方法にある抜け穴に対処しようとしない上院を非難した。
下院の法案が制定されれば、必要とされる記録を適切に報告していない連邦政府機関にはペナルティーを科し、連邦政府の助成金支給の選定基準を順守している州には報奨を与えることになるだろう。テキサス州で起きた家庭内発砲事件の犯人が有罪判決を受けた事案について、空軍が全米犯罪情報センターのデータベースへの報告を怠ったことを認めたことを受けて起草された草案は、現在上院で審理中である。
当局が精神病患者から銃を没収するべきかどうかを問われ、ライアン議長は、「乱射事件の背後にある事実の全容を正確に把握する前に、その結論を導こうとするのは時期尚早だ」と言った。
フロリダ州共和党員のマルコ・ルビオ上院議員は、議会が銃撃事件にどのように対処するのかを議論するのは理にかなっているが、上下院の議員は自身の力に限界があることを認めなければならない、と言った。
そして2月15日には上院の議場で、「誰かが『この犯罪を実行しよう』と決意したならば、次に、悪事を成功させるために銃を入手しようとするだろう」と言った。
ルビオ議員は、「私たちが出来ることは何もない、と言い、見て見ぬふりをするのもやはり間違っていると思う」とも述べた。さらに、「銃規制の問題はたしかに難題だ。しかし、私たちは必ず何らかの手を打たなければならない」と厳しい表情で語った。
By MATTHEW DALY, Associated Press
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