ロシア疑惑、トランプ一家に近づく特別検察官の捜査 現地報道過熱

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 ロバート・モラー特別検察官による米大統領選ロシア共謀疑惑捜査がここへ来て急展開を見せている。とはいえ、モラー氏が表立った行動を起こしたわけではまだなく、トランプ米大統領の連日の言動と、その周囲の動き、そしてメディアによるロシア疑惑の報道が過熱気味だ。そしてその背景に、モラー氏の捜査の手がトランプ氏とその一族に近づいているサインが見えている。

◆「モラー氏と話したい」トランプ発言に弁護士が「待った」
 アメリカのメディアは1月24日一斉に、トランプ大統領が「宣誓をしたうえでモラー氏と話す意思がある」と話したと報道した。NBCニュースの同日付の記事は、トランプ氏は「(モラー氏と話すことを)実は楽しみにしている。なるべく早く実現させたい」と述べたことを報道した。

 しかしトランプ氏はどうやら、その時の気分で先走った発言をしたらしい。翌25日、トランプ大統領の弁護士がその発言に「待った」をかけた。CNNの同日の報道によると、トランプ氏の弁護士ジョン・ダウド氏は、「トランプ大統領がモラー特別検察官と話すかどうかは私が決める。今のところは決断を下していない」と述べた。

 トランプ大統領、そして弁護士の発言から判断すると、モラー氏がトランプ大統領と直接話す機会を作ろうと試みていることは確かだろう。そしてトランプ大統領もそれを承知しているはずだ。

◆バノン氏召喚と証言拒否のクシュナー氏
 CNNが1月24日に報道したところによると、モラー氏はマイケル・フリン前大統領補佐官(国家安全保障担当)とジェームズ・コミー前FBI長官について尋ねるため、スティーブ・バノン前首席戦略官・上級顧問を大陪審に召喚した。モラー氏の捜査の手は確実にトランプ氏の周囲に伸びてきているのだ。

 米政治サイト『ポリティコ』の1月25日付記事によると、米上院司法委員会の委員長を務める共和党のチャック・グラスリー上院議員は、2016年7月にトランプ氏自宅があるニューヨークのトランプ・タワーでロシア人弁護士を含むグループとの面会について、トランプ大統領長男のドナルド・トランプ・ジュニア氏が同委員会で証言を行った際の記録を公開する用意が出来ていると述べた。

 この面会には、当時トランプ陣営で選対本部長を務め、資金洗浄容疑によりすでに逮捕・起訴されたポール・マナフォート氏とトランプ氏の娘婿でトランプ政権の上級顧問を務めるジャレッド・クシュナー氏も出席していた。しかしグラスリー氏によると、先に同委員会でトランプ氏に関する調査書について証言を行っていた人物の証言記録が民主党のダイアン・フェインスタイン上院議員により公開されたことでクシュナー氏が「恐れおののいて」、委員会での証言を拒否しているという。

 隠すこと、やましいことがなければ証言を拒否する必要はないだろう。証言を拒否しているということから、大統領選時のクシュナー氏の役割についてモラー氏がさらなる関心を持ち、バノン氏に続き大陪審への召喚につながる可能性も高い。

 このような捜査の進展状況から判断すると、モラー氏が次の動きを見せるのは時間の問題と思われる。次の段階としてモラー氏がトランプ大統領と直接話そうとするシナリオは考えにくいが、ドナルド・トランプ・ジュニア氏またはクシュナー氏がモラー氏による次の捜査対象であることは想像に難くない。

Text by 川島 実佳