いずも空母化:高額な改修費、それでも「移動基地」が必要とされる理由
◆一隻の改修に年間防衛予算の5%
米技術誌ポピュラー・メカニクスは、「日本政府がこの計画を実行すれば、『いずも』は(建造された)横浜の造船所に戻り、大規模な改修を受けることになる」とし、改修ポイントを詳しく分析している。まず、飛行甲板がF-35Bの離着陸の際の排気熱に耐えられるよう、新技術による耐熱コーティングを施す。また、船首に装備されているファランクス近接防御システムは、離着陸の邪魔になるため撤去される可能性がある。
同誌はまた、F-35Bの航空燃料と補修部品をストックする必要があるため、格納庫のスペースは今より狭くなると指摘。世界中で運用されているF-35の修理と予備パーツを管理する自動兵站情報システム(ALIS)の導入も不可欠だとしている。ほかに、短距離離陸を補助するために、船首をジャンプ台のように反り返らせる改修が検討されているという報道もある。
これらの改修に必要な予算は、「10機+予備2機のF-35Bのコストが約14億ドル、船の改修費が5億ドル。一連のプロセス全体で日本の年間防衛予算の5%を費やす。日本政府は、『いずも』と『かが』を合わせて総予算約40億ドルで改修すると見られる」(ポピュラー・メカニクス)という。同誌は、「たった20機の航空機を海上に置くにしては高額すぎる。それは、GDPのたった1%しか防衛予算に割かず、赤字から抜け出せない国にとっては、厳しい現実だ」と指摘している。
◆中国は非難一色
空母保有の目的は、中国が軍事行動を活発化させている南西諸島周辺、尖閣諸島周辺などの防衛力の強化だという見方が強い。ポピュラー・メカニクスは、両エリアはいずれも複数の中国空軍基地から航続距離内にあるが、日本がその防衛に当てられるのは、那覇基地のF-15J約40機のみだと指摘。その那覇基地も戦争になれば中国の弾道ミサイルによって無力化される公算が高いとしている。そのため、予算を度外視してでも「移動基地」として弾力的に運用できる空母を持つべきだという考えが政府内にはあるようだ。
もう一つの壁は、空母は「攻撃型兵器」であるため、専守防衛のための防衛兵器しか持てなという日本の憲法上の制約に反するのではないかという問題だ。中国外務省は、一連の報道を受け、早速この点を突いている。豪メディア『news.com.au』は「完全な航空母艦は移動軍事基地だ。それは、明らかに攻撃的な性格を持つ」と指摘。日本がかつて世界一の空母保有数を誇り、それを用いて真珠湾攻撃を実行して戦火を開いたことを念頭に、中国政府が「歴史的な意味において近隣諸国の関心を引くだろう」と牽制したと伝えている。
中国外務省のスポークスマンは、報道後の定例記者会見で、「日本が平和憲法を破れば、中国との関係は悪化する。特に日本が誤った歴史認識を譲らばければ、軍国主義に向かうだろう。これ(『いずも改修計画』)は、健全で安定した現在の中日関係の継続に多くの困難をもたらす」と非難した。また、中国の軍事評論家は、改修計画は「日本が純粋に防衛的な防衛戦略を放棄したことを意味し、防衛と攻撃の両方の軍事的戦略に向かっていることを示す」とコメントしている(中国英字紙グローバル・タイムズ)。
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