中国共産党のプロパガンダを担う中央宣伝部 その役割と活動内容とは?

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 中国共産党第十九回全国代表大会にて、中国の習近平国家主席は、中国国内での彼の権力を確固たるものにした。今や、彼の思想は中国の憲法にも反映されている。

 さらにこれからは、新たに中央政治局常務委員に選出された、学界出身の政治家である王滬寧氏が、中央宣伝部のプロパガンダ活動を推進し、習氏の「中国の夢」思想を確立し、国内外に広めるだろうと予想される。

 習氏にとって、思想は中国共産党政権の正当性を維持するための大切な武器である。彼は、これまで中国のインターネット空間を党の思想と原理を推進するために活用してきた。よって、全てのメディアは中国共産党への忠誠を誓わなければならず、最近ではインターネット会社ですら、職員を中国共産党に参加させることを奨励されている。

 プロパガンダ体制を管理する中央宣伝部は、国家の文化、芸術、教育に関する政策を決定づける「思想的戦線」の中枢をなしているのである。

 殆どの西洋メディアは中国の思想的な統制を「プロパガンダ」として言及しているが、それを作り上げ、この思想的戦線を維持している複雑な官僚制を説明していない。以下が、香港の調査報道局であるThe Initiumが中国語で発表した綿密な報告の一部の翻訳である。

◆中国共産党中央宣伝部の略歴
 1924年、中国がまだ北洋軍閥、中国国民党や、その他の小さな地方派閥などの軍部派閥によって分断されていた頃、中国共産党は軍閥を鎮圧するために政治同盟を結んだ。これが、後に中国共産党の中央宣伝部の設立のもととなったものである。当時の中央宣伝部の主な役割は、公的な声明の発表、スローガンの制定、チラシの作成、そして北伐中に国民革命軍内及び一般国民に対して中国共産主義とは何かを説明することであった。

 1937年から1945年まで続いた第二次日中戦争では、中国共産党人民解放軍が延安市に共産党基地を設置したとき、毛沢東国家主席(在任期間1943年~1976年)が党の新聞と雑誌を再編成し、全ての出版物が共産党の利益になるように、整風運動と呼ばれる思想的な大衆運動を初めて作り上げた。

 これによって毛氏は、政治の為にジャーナリズムを用いる原理を確立したのだった。これが、後に歴史学者によって「毛沢東ジャーナリズム」と呼ばれるものである。

 中央宣伝部は国内に知られる情報を統制するために、党役員のみのための機関紙の発行も開始した。

 中国共産党の思想を説明し、広めることの他に、中央宣伝部はニュースの見解や出版物を検閲し、芸術作品の作成を主導した。

 反右派闘争と呼ばれる思想的対立の中で1958年に設立された「中央文化教育部」も中央宣伝部の部長によって先導された。中央宣伝部は、毛氏の時代には、教育制度を除いて、党の意思決定と政策実施機関である共産党中央事務局の次官によって率いられており、スポーツや保健医療、その他非政治的な活動に関する責務を負っていた。

 しかし、その後、鄧小平による改革(1979年~1987年)の中で、鄧氏がメディアの商業化を進めたため、中央宣伝部の権力は弱められていくこととなった。

 ところが、1990年代に入ると、1989年の六四天安門事件の影響で中央宣伝部は再び政治的に重要な存在となった。中央政治局の常務委員が当時中央宣伝部の部長となった。

◆現在の中央宣伝部
 現在、中央宣伝部は四つの重要な役割を担っている。

1. 思想統制。中央宣伝部は思想局と教育局を管轄下においている。これら二つの支局はよく中国共産党の思想と政策についての記事を出版する。

2. 文化と芸術。中央宣伝部は、文化部、国家新聞出版広電総局、及びその他中国文学芸術界や中国作家協会等文化と芸術に関わる政府機関を主導し、文化と芸術の生産の主事となっている。

3. 教育と研究。中央宣伝部は国家的な思想と政策の教育制度を司っている。さらに、全国的な哲学及び社会科学計画委員を何十億元もの金額を投資することで先導し、国内の人文科学研究や社会科学研究を制御するために国家的な研究を行っている。2017年だけで十以上もの「習近平国家主席の~に関する見解」というタイトルの研究報告を発表している。

4. 対外的な発表。中央宣伝部は、海外のメディアとの交渉と、中国のニュースと政策を世界に広めるための国際局を管轄下におく。

 また、中央宣伝部は、Nouvelles d’Europe (欧洲时报)や China Times (旺报)などの「海外メディア」に投資し、海外の中国人コミュニティ向けに、中国に好意的な報道をさせている。

 中国では、全ての国内の新聞社、ジャーナル誌、出版社は政府か共産党の支配下にあり、中央宣伝部が直接検閲を行うことができる。

 最近の権力の拡大としては、国家新聞出版広電総局の新しい局長である蔡赴朝氏が中央宣伝部の副部長であることが挙げられる。蔡氏はまた、中国サイバースペース管理局の局長とサイバー空間情勢指導グループの役員でもある。これは、元来のメディアの統制にも新しいメディアの統制にも中央宣伝部の息がかかっているということを含意している。

◆新たなメディアの統制
 ここ数年の、モバイルインターネットとSNSの急速な普及によって、中国のネット民たちは自分の意見を口外しやすくなった。この問題に中央宣伝部はどのように向き合っているのだろうか。

 2012年以来、ネットメディアの取り締まりは、ある意味「新常態」となってしまった。新たに発足したサイバースペース管理局は、国家と党の支配下にあるメディアがネット上での人々の意見形成に影響を与える中心的な役割を再び果たすよう、検閲を始めたのだった。

 2017年6月には、様々なSNS上にあるいくつもの娯楽用のサイトが社会主義に背いたとして一夜にして削除された。中にはウィチャットで何百万人ものフォロワーがいたものもあった。

 中央宣伝局は、検閲を司っており、党の資金を利用して国内外のメディアに投資することもできる。さらには、彼らの戦略は年々進化しており、新たなテクノロジーの導入によって彼らの政治的影響力はより効率的かつ不透明なものになっている。

「過去を制御する者が未来を制御する」のは、もはやジョージ・オーウェルの暗黒郷ではないようだ。

By JIMMY WU
This article was originally published on Global Voices. Read the original article.
Translated by AnthonyTG

Text by Global Voices