ネタニヤフ首相の後任候補、労働党のガベイ党首 パレスチナ和平に意欲

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 2016年、内閣の若手幹部だったアビ・ガベイ氏は、ベンヤミン・ネタニヤフ首相と袂を分かつこととなった。その彼が今、スキャンダルにまみれた首相の後任最有力候補となっている。

 自身の立身出世物語と中道的な世界観がイスラエルの伝統的な考えを持つ無党派層に支持され、ガベイ氏は野党労働党の新リーダーとして、世論調査で大きな支持を得ている。

 しかし、元電気通信会社幹部である50歳のガベイ氏の目標は、選挙での勝利のみにとどまらない。彼は、ビジネスマンとしての背景や、「ごく普通の人」という個性を持つ自分なら、パレスチナとの和平協定(ネタニヤフ首相が、もはや口にも出さなくなったことだ)締結を成功させられると信じている。

 ガベイ氏は11月半ば、テルアビブにある簡素な労働党本部でAP通信に対し、「協定締結にたどり着けるかわからないが、我々は再び力を尽くさなければならない。これ以上無視するわけにはいかない」と語った。

「ベンヤミン・ネタニヤフ氏は、外交協定締結など無理だと思っているし、その気もない。この2年半、彼は『2つの国家』という言葉を口にしていない」と彼は付け加えた。「しかし、私には1つわかることがある。そのために努力するのが我々の義務である」。

 イスラエル国外ではまだあまり名の知られていないガベイ氏だが、今月ワシントンで開催されるサバン・フォーラムに参加し、国際社会へとデビューを果たすことになっている。サバン・フォーラムは政策立案者が一堂に会してアメリカの政府当局と一連の会合を行う、影響力の大きな国際会議だ。

 ガベイ氏は、長きにわたって影を潜めてきた労働党を再び活性化させることで、2009年以降首相の座に就くネタニヤフ氏を失脚させられる、と話す。彼の戦略は、保守的なリクード党とある程度同じ立場をとることで、ネタニヤフ氏の支持者を取り込んでいこう、というものだ。

「私はこの国の国民として生まれ、国民のために働くためにここにいる」と彼は言った。

 モロッコから移住してきた両親の8人中7番目の子供として生まれたガベイ氏は、貧しいエルサレム地区で育った。アラビア語圏からのユダヤ系移民の多くがそうであったように、彼の家族もまた創設された労働党に対して憤りを感じ、長くリクード党を支持してきた。

 しかし、7月にガベイ氏が労働党党首に当選して以降、世論調査を見ると、同党の力が倍増し、今まで労働党を支持したことなどなかった有権者をも引き付けていることがわかる。さらに重大なことに、世論調査によると、労働党は協力が見込める他党とともに、リクード党抜きの連立政権を設立できるほどの支持獲得へと、少しずつ前進しているのだ。

 次の国政選挙は2019年に予定されている。しかし、イスラエルの政権がその任期を全うすることは極めてまれで、ネタニヤフ氏の汚職問題により、次の選挙が前倒しになる可能性はある。ガベイ氏の願いは、選挙で労働党を1999年以来の勝利へと導くことだ。

 ここ数週間、彼はネタニヤフ氏並みにニュースを騒がせてきた。彼は、自らが首相に就任した後は、和平協定にヨルダン川西岸のユダヤ人入植者撤退を盛り込まないとし、またイスラエル議会内のアラブ系派閥を連立内閣から排除しないと話し、さらにユダヤ人の歴史的遺産を軽視する左派を非難した。また、彼は煩わしい重荷を捨てるため、労働党の名称変更を検討しているとも言われている。

 この動きは、中道派や中道右派の票を集めるための巧妙な政治戦術だと賞賛されているが、同時に党のイデオロギー基盤をないがしろにしていると批判の声も上がっている。

 イスラエルのリベラル派日刊新聞のHaaretzは、「労働党の党員は、左派団体のメンバーのように、自党の基本的価値観への忠誠心を示すリーダーを持つべきだ」と論評している。「労働党は自らの地位を一新するために危険を冒し、比較的名の知られていない候補者に賭けた。しかし、実は無意識のうちに自らの世界観がすり替えられていたと知ったら、彼らは嘆くことだろう」。

 パレスチナ自治政府のハナン・アシュラウィ氏は、労働党がリクード党に反対するのではなく、競うことで、自らの道を見失っているのではないか、と懸念を表明した。

 さらにアシュラウィ氏は「労働党は、今、リクード党とは異なるもの、ではなく、同一線上にいる」と述べた。「これでは、希望が持てない」。

 ガベイ氏は、労働党の古い体質を打ち破るとしながらも、ネタニヤフ氏と自分は違う、と主張する。第一に、彼は真剣に平和を追求すると話している。それを体現する例として、ガベイ氏は、主要な定住居留区(いわゆる「blocs」)以外の場所で、新たな入植地建設は停止することを誓った。定住居留区はイスラエルにとって、いかなる和平協定のもとでも譲歩できない入植地だ。

「私はこれらの地域で、ユダヤ人の数はできるだけ少ない方がいいと考えている。これは明白な問題であり、それを悪化させる道理はない」と彼は語った。「我々は創造的な解決法を見つけることができる。パレスチナ人の多くが求めているのは、信頼に値し、交渉することが可能で、決断を下すことのできる人間だ」。

 ガベイ氏は、ほとんどのイスラエル人が今もイスラエル沿いにパレスチナ国家が設立されることを支持しているものの、一方でパレスチナに対する信頼を失っていると考えている。また対するパレスチナ人は、ネタニヤフ氏を信用していないため、交渉再開に二の足を踏んでいる、と言う。

「私は機会を作りたいと思っている」と話すガベイ氏だったが、和平案の具体的な内容については、度重なる質問にも、回答を拒んだ。

 ガベイ氏は自身の経済政策について、ネタニヤフ氏とは大きく異なるものであり、今こそ自分が長きにわたり政権を手中にしてきたネタニヤフ氏の後を引き継ぐ時だ、と話した。また、世間とかい離したライバルを非難した。

 ネタニヤフ氏は、メディアや国際ビジネス、そしてハリウッドの経営幹部との間に収賄や違法行為があったとされる嫌疑で何度も警察の取り調べを受けている。警察によると、ネタニヤフ氏は贈収賄や詐欺、背任行為への関与が疑われる。

 イスラエルの通信大手Bezeqの最高経営責任者(CEO)としてビジネス界で名を成したガベイ氏は、2015年の選挙を前に、中道右派のクラヌ党の共同創設者として政界に進出し、労働者のための経済基盤構築に取り組んだ。

 ガベイ氏はしばらくの間、ネタニヤフ政権で環境大臣を務めた。昨年、ネタニヤフ首相が民族主義者のアヴィグドル・リーベルマン議員の意向を受け、著名なモーシェ・ヤアロン国防相を失脚させた。それに抗議したガベイ氏は、大臣を辞任した。その後、彼は労働党に入党し、自らを人生の弱者とする驚異的なキャンペーンを展開し、同党を掌握した。

 ガベイ氏は、今後二度とネタニヤフ氏のもとで働くことはないと誓っている。

「政権にいた時期、私を失脚させようとするものはいなかった」と彼は語った。「私なら、見事にやり遂げられると思う」。

By ARON HELLER, Tel Aviv
Translated by isshi via Conyac

Text by AP