「黄金期」を迎える日比関係 テロ復興や地下鉄建設などで経済協力
フィリピンのドゥテルテ大統領が来日し、日本の安倍首相と10月30日に首脳会談を行った。会談の成果として、首都マニラでの鉄道整備事業をはじめ、幅広い分野での関係強化で合意した模様だ。フィリピン大手紙のマニラ・ブレティン(10月31日)によると、ドゥテルテ大統領は「フィリピンと日本は戦略的パートナーシップの黄金期を築きつつある」と歓迎する。背景には深い親日感情があるが、強かな打算を指摘する海外メディアもある。
◆インフラ支援などの強化で合意
外務省の発表によると、マニラ首都圏での鉄道整備をはじめとするインフラ協力のほか、エネルギー、雇用創出、ミンダナオ島のテロ災害からの復興支援など、幅広い分野で戦略的パートナーシップを強化することで両国が合意している。
マニラ・ブレティン紙では特にテロからの復興を重点的に取り上げている。マラウイ市はISIS系武装集団に占拠されていたが、安倍首相は、フィリピン国民が直面した困難について深い理解の念を示したという。首相はドゥテルテ大統領の復興の手腕を賞賛したほか、街の再建に必要な資材を提供し、将来的には道路建設などにも協力することを約束したと同紙は報じる。
会談では他にも、インフラ構築と治安維持の分野への投資が決まった。国内のテロに加え、中国との領海問題を抱えるフィリピンにとって、復興と安全性の向上は悲願と言えるだろう。
◆ドゥテルテ大統領との絆
ドゥテルテ氏が大統領に就任したのは2016年6月のことだが、それ以前から日本とは深い関係があった。ロシアの通信社スプートニクは、氏がまだダバオ市長であった頃から、日本のODAが市の施策に貢献していたと評価する。ODAによる直接的な資金援助に加え、アジア開発銀行に対して日本が一定の影響力を有していたことから、フィリピンでの各種インフラ開発を円滑に行うことができたとしている。
市長時代の援助に恩義を感じてか、ドゥテルテ氏は安倍首相に対して非常に友好的な姿勢を見せている。アメリカの保守系ニュースサイト『ブライトバート』によると、前回安倍首相がフィリピンを公式訪問した際、氏の自宅に招待された。友好の証として、自家製の伝統料理が振る舞われたとのことだ。また、安倍首相は氏のお気に入りの蚊帳を借り、そのまま宿泊したという。公式な会談だけで済ませることもできたはずだが、並ならぬ歓待ぶりが伝わるエピソードだ。
◆両国の強かな外交戦略
心温まる逸話の一方で、今回の会談は両国の打算に満ちたものだとの見方も出ている。スプートニク(10月30日)が指摘するのは、米中との関係性だ。フィリピンにとって海の安全保障という意味で中国の脅威は増す一方だが、対抗勢力としてアメリカ一国に依存する戦略もまた危険だ。米中とバランスを取るべく、第3の存在として日本に歩み寄ったのではないかと記事では指摘する。日本との関係強化で「フィリピンは、中国かアメリカのバスケットにすべての卵を入れる必要はなくなる(一か八かでどちらかにかける必要はなくなる)」と記事は分析する。
日本としても、インフラ開発をはじめ、将来的な商機を見いだしたいとの目論見があるようだ。ブライトバートによると、今回の日比合意の中で、日本が少なくとも25のプロジェクトに参画することが発表されている。フィリピン側のスポークスマンも、同国を安全でビジネスの展望が予測しやすい国だとアピールしているようだ。
フィリピンがテロの爪痕から立ち直るにあたり、復興への可能性に満ちた互恵関係とできるだろうか。