「日本のデニス・ロッドマン」猪木氏、北朝鮮問題を解決に導けるか 海外紙の評価は?
日朝関係の緊張が最高潮に達したことから企画されたというアントニオ猪木議員の今月7日から11日の訪朝について、各国の海外紙がそれぞれ異なる反応を見せている。
◆「日本のデニス・ロッドマン」
ニューヨーク・タイムズ紙は猪木議員の訪朝を、「日本のデニス・ロッドマン(北朝鮮を繰り返し訪れた元NBA選手)か。元レスラーの政治家が32回の訪朝」というタイトルで報じた。
「かつて日本で最も知られたレスラー」で「74歳の国会議員」の猪木氏は、ブラジルで北朝鮮出身の力道山に見いだされたことが北朝鮮との最初の接点であると紹介する。フィデル・カストロ氏やサダム・フセイン氏などとも独自外交をしていたという経歴を伝えている。
「北朝鮮に耳を傾け、彼らの活動の背景にどんな理由があるのかを理解すべき」と主張する猪木氏を、「平壌の不透明な権利主義国家の指導者への数少ないつながりをもつ人物」としながらも、「影響は与えるものではない」としている。また、ロッドマン氏と違い、猪木氏が金正恩氏と面会していないことにも触れている。
ニューヨーク・タイムズ紙によれば、日本政府は猪木氏の訪朝ついてほとんど言及しておらず、菅官房長官は日本国民が北朝鮮に行くことを政府は推奨できないと繰り返していた。また日本の批評家たちが、猪木氏は、ロッドマン氏と同様、北朝鮮のプロパガンダとして使われる一方で自身の宣伝に利用していると評していることにも触れている。北朝鮮の専門家である重村教授の、「彼はそんなに重要な人物ではない、彼は日本のリーダーや首相に影響を与えていない」という発言も伝えている。
◆「変わり者の外交官」
アイリッシュ・タイムズ紙は、猪木氏を、近頃は北朝鮮との戦争を避けようとしている変わり者の外交官として知られていると報じている。「スポーツを通して世界の平和」と頻繁に繰り返しているが、猪木氏が何を達成したいのかしばしば曖昧であると辛辣だ。
以前サダム・フセイン氏と交渉して、日本人とアメリカ人の開放に貢献したことがあったものの、このような外交的なブレークスルーを期待する批評家は今ほとんどいないとする。猪木氏が、「1976年に世界最強のボクサー、モハメド・アリを打ち負かせなかったことをその後怒っていたようにみえた。彼はそんな男だ」と締めくくっている。
◆「猪木氏の行動には意味がない」
以前猪木氏が訪朝を自身の宣伝に使っていると日本国内で批判されたことに対して、次のように反論したとワシントン・ポスト紙が伝えている。
「私のような人物は稀です。(批判を)私は気にしないと言っておきます。勇気は不可欠だ。自国民からサポートを得るのは重要です。しかし、他の皆より半歩、一歩前に出なければいけないのです……。いつの日か、誰かが、私が善意で行動したことをわかってくれるでしょう」。
こういった意見に対し、ハーバード大学の教授で「ソフトパワー」論の父として知られるジョセフ・ナイ氏は懐疑的である。強制や支配で動く国である北朝鮮は「ソフトパワー」が通じないように思われるからだ。事実、ニューヨーク交響楽団が2008年に訪朝したことが北朝鮮とアメリカの国交になんの影響も及ぼさなかったと語っている(同上)。