どのようにして国家は誕生するのか ―専門家による説明―
著:Rebecca Richards(キール大学 Lecturer in International Relations)
今秋、僅か一週間のスパンの間にカタルーニャとクルディスタンの人々は独立国家に住みたいかどうか問われることになる。もし、これらの二つの選挙が独立宣言に終わったとき、何が起こるのだろうか。カタルーニャやクルディスタンが新しい国家となる、というのが直感的であるが、実は意外にも事態は複雑である。
国際法は、人々は自身の政治的地位を含んだ自身の未来を決める権利を有していると明言している。私たちの民族自決権は国連憲章で保障されており、市民的及び政治的権利に関する国際規約でより明確にされている。これは、国際社会に認められた主権国家を有する権利ともとれる。しかしながら、これは多くの場合、国民が誰にどのように統治されるかを決める権利として解釈される。言い換えるならば、現代の民族自決権は新たな国家への道しるべではなく既存の国家の中で人々が選択肢をもつことを意味するのだ。
これは部分的には民族自決権に関する法整備が脱植民地化運動の最中に推し進められたことに起因する。これに関する歴史的背景はこの意図を理解するうえで無視することはできない。当時、入植者は彼らが築いてきた帝国を解体し始めていた。それは植民地を維持することがより高くつくようになり、植民地の中でも政治的な圧力が強まっていたからだ。
◆国家建設
国家を建てることをさらに複雑化するのは、一地域が新しい国家になることで既存の主権国家が一部領土を失うという事実だ。これは、領土保全に関する法や慣習を破ることとなる。特に、これらは国際社会の根底にある最も古くて確固不抜な規定の類である。
新しい国家を認めることで、ある地域の主権を権威者から権威者へ移行させることを法的に認めることになる。国連を含めた国際機関は、「元の」国の許可なしにある地域を取り上げることはできない。それをしてしまうと、国家システムを形作るものを破ることとなるのだ。
例えば、2008年にセルビアから独立したコソボは国連加盟国の半数以上が独立を認めているものの未だに主権国家ではない。もちろん、他の要因はあるだろうが、これはセルビアがその領土への主権を未だ主張していることが大きな要因である。同じように、クルディスタンが国家になるためには、イラクがその地域の主権を譲渡する必要がある。
明らかに、この問題には二つの法原理が競合している。少なくとも一つの事例ではこの競合が同じ法の中に見える。実に、私たちが調べたところ、主権国家をつくるための明らかな法的な道しるべは存在しない。ある領域が主権国家かどうかを決定する法的に整備された制度も存在しない。よって、どうそれがなされるかは過去の例を遡る必要がある。
最近国ができた例として、2002年に認められた東ティモールや2011年に認められた南スーダンが挙げられる。1990年初めには、ソビエト連邦の崩壊とユーゴスラビアの解体によって新しい国がいくつもできた。1993年にはエリトリアが、1962年にエリトリアを併合したエチオピアとの何十年にもわたる戦争の末、独立を果たした。その以前にも、帝国の崩壊や変遷、特に植民地主義の終焉によっていくつもの国が誕生した。
東ティモールや南スーダンにとって建国は激しい抗争を解決するための試みの一部であった。エリトリアについても様々な意味でこれがあてはまるだろう。3つのケース全てで独立元(東ティモールにとってのインドネシア、南スーダンにとってのスーダン、エリトリアにとってのエチオピア)の国は和平合意の一部でその地域の主権を譲渡することで合意した。
これらの新しい国々は全て過去主権を持っていた国の消滅か、過去の主権国の許可によって主権を手に入れた。これら全てに当てはまることは、これらの国は全て何かの問題を解決するために国になったということと、国際的な利益がなかったということだ。世界の新しい国々にとって、主権国家として認められたのは政治的行為であって、法的に定められたプロセスに基づくものではなかった。
◆どうしたら独立国家として認められるのか
法的には明確化されていないものの、ある領域は国連によって認められれば主権国家となることができる。最も大きくて包括的な国際機関として、主権国家の承認を行う機能を持つことには納得がいく。
しかしながら、国連への加盟を承認するプロセスは国連憲章と国連の規定に明記されているが、これらは既に主権国家であるものに限られる。またしても国家になりたい地域が主権を獲得するためのプロセスは曖昧になっている。
国際的に認められた主権国家になるのは単純明快で簡単なことではない。様々な意味でそれは力関係や国際情勢に依存する。驚くほど沢山の地域が、何十年もの間、主権が認められずに非承認の国家として存在し続けている。
もしカタルーニャとクルディスタンが今秋独立を宣言したならば、独立元の国の承認によって主権を手に入れることができるかもしれない。しかし、もしそれができなければ、独立を宣言し、無期限に非承認の国家として存在し続けることになることができる。
This article was originally published on The Conversation. Read the original article.
Translated by AnthonyTG