「香港の若者にノーベル平和賞を」 雨傘運動3幹部への実刑判決、欧米紙が反発
香港の民主化運動「雨傘運動」で指導者として活躍した黄之鋒(ジョシュア・ウォン)氏ら3人に17日、禁固刑が課された。これを中国政府からの圧力の結果とする見解が多く、香港の法的独立を意味する「1国2制度」に反するとして、香港内外から批判の声が上がっている。
◆二度の刑罰に市民が抗議
2014年に黄之鋒氏(当時17歳)、羅冠聰(ネイサン・ロー)氏(当時21歳)、周永康(アレックス・チョウ)氏(当時24歳)らは、香港の行政長官(首長)の立候補者に対する中国政府からの制限に反対し、デモ活動「雨傘運動」のリーダーとして活動していた。
昨年7月、非合法集会に参加した罪などで彼らは有罪判決を受け、社会奉仕や執行猶予付き禁固刑などを課された。彼らはすでにこれらを全うしたが、検察側の上訴により香港高等法院(高裁)から新たな実刑判決が下されることになった。黄氏に6ヶ月、羅氏に7ヶ月、周氏に8ヶ月の禁固刑が言い渡され、即日収監された。
香港では20日に抗議デモが開催され、数万人が参加した。これは、2014年のデモ以来最大規模とされている。
◆「彼らにノーベル平和賞を」
多くの欧米メディアがこの判決を批判している。ニューヨーク・タイムズ紙(NYT)の編集員バリ・ワイス氏は17日、オピニオン記事でノーベル委員会に対しノーベル平和賞を黄氏らに授与するよう呼びかけた。黄氏らは無罪であり、中国政府に操られている司法制度が彼らを不当に罰したと主張している。また、黄氏らを「香港初の良心の囚人」と称し、旧約聖書の若い羊遣いが屈強な巨人兵士を破るという「ダビデとゴリアテ」の逸話を引き合いに出して、「権威主義的な中国」をゴリアテ、黄氏らの民主化運動をダビデに例えている。
また、ワシントン・ポスト紙(WP)も社説記事で親中派の香港政権と北京の中央政府を批判している。1997年の香港返還の条件として確立された「1国2制度」の自治と民主主義が脅かされていると述べ、6月に行われた行政長官選挙で不人気の親中派候補が当選したことや、7月に香港議会の民主派議員4人が議員資格を剥奪されたことにも触れている。
英国のフィナンシャル・タイムズ紙(FT)は、英国領時代最後の香港総督、クリストファー・パッテン男爵による投書を公開した。パッテン男爵は、この判決が「自由な社会のままでいるという香港の願望に北京が圧力をかける一例」であるという見解を示し、英国政府に立場を示すよう求めた。
同じく英国のガーディアン紙は、香港返還時の元英国外相マルコム・リフキンド氏やモルディブの元大統領モハメド・ナシード氏などの世界中の政治的リーダーら25人が署名した公開状を18日付で掲載した。この公開状もまた、3人の釈放と「1国2制度」の尊重を呼びかけている。
少数派ではあるが判決に賛成する意見も寄せられた。パッテン男爵への応答として、元香港法律政策専員(司法次官に当たる)のバートランド・ド・スペヴィル氏がFT紙に投書し、今回の判決を、香港を79日間麻痺状態にしたデモ活動に対して妥当な刑罰であると主張。中国政府が「直接影響したと示唆すること」は「香港の法の支配を阻害する」と述べた。
◆黄氏らの称賛に懐疑的な香港メディアも
一方、香港メディアは親中派と民主派で分かれている。英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポスト紙(SCMP)は、NYT紙のノーベル賞授与の記事に反論。黄氏ら3人が罰せられるべきでないという前提に疑問を呈し、「無罪であったならばなぜ彼らは(最初の判決で課された)社会奉仕の刑を受け入れたのか」と問いかけている。
オンライン紙「香港フリープレス(HKFP)」は、黄氏らの行動が犯罪にあたるかどうかではなく、司法手続の不当性について論じている。控訴裁判所での判決は、一審判決の内容を無視したものとなっているが、これは控訴の許容範囲を超えているため一事不再理の原則に反すると指摘している。
欧米紙が主張するように香港の「1国2制度」が崩壊し始めているのであれば、今回の判決は香港の自由や民主主義を求める人々に大きな打撃となっただろう。しかし、民主化運動は今後も続くことが予想される。刑が言い渡された直後、黄氏はこうツイートした:
我々の体を閉じ込められても、我々の精神は閉じ込めることはできない! 我々は香港に民主主義を求める。我々は諦めない。
You can lock up our bodies, but not our minds! We want democracy in Hong Kong. And we will not give up.
— Joshua Wong Chi-fung (@joshuawongcf) August 17, 2017