「日本のカジノだめかも……」海外から懸念の声 厳しすぎる規制に本末転倒とも
昨年IR法案(統合型リゾート法案、いわゆるカジノ法案)が国会で成立したことを受け、賭博法との整合性を取るための議論が急ピッチで進められている。海外の事業者も出店に意欲を示す一方で、度重なる規制条件の追加には批判的な声もある。
◆海外のカジノ運営業者も意欲 各種規制には賛否
ブルームバーグはカジノ解禁で年間250億米ドル(約2.8兆円)規模の収益が見込めるとしている。「今日まで、運営会社たちは日本でのカジノ賭博にとめどない熱意を示してきた」(7月14日)と、海外事業者の意欲も高い。だが、ATMの設置禁止、日本人はクレジットカードの使用禁止、顧客への金銭の貸付禁止など、次々と追加されるルールが事業者らの出店意欲を削いでいると警鐘を鳴らす。
一方、フォーブス誌は依存症対策の必要性にある程度理解を示すトーンだ。先月2日にマニラのカジノで銃乱射事件が起きているが、ムハンマド・コヘン氏の寄稿記事では、これはギャンブル依存症患者によるものだったと見ている。依存症対策をどこまで厳格に行うかについては、海外メディアでも主張が分かれているようだ。
◆不要な規制を問題視する海外メディア
カジノにまつわる諸問題への議論は必要だが、それにしても日本の規制は行き過ぎだという見解も目立つ。ブルームバーグが最も問題視するのは、カジノによる貸付の禁止だ。カジノは顧客管理をし、与信と貸付を行うなど、銀行と非常に似た面を持つという。これを禁止すると(カジノ法案の本質である)経済効果が損なわれるとし、「バーでビールを制限することに近い」と例える。また、顧客は結局どこかから借りることから、闇金融による非合法な貸付を助長するのではとの懸念を抱く。
カジノ業界誌『GGRアジア』は、運営業者らの立場から規制を批判する。床面積をシンガポールの制限と同じ1万5000平米までとする動きがあるが、双方の人口は大きく異なるため、同じ数字を当てはめるのはナンセンスだという主張だ。シンガポールの人口約560万人に対し、東京都だけで約930万人となっている。あくまでカジノ業界としての立場だが、海外の既存ルールを鵜呑みにすべきでないという主張には一理ある。
◆国内での事例がないことから慎重論が先行
カジノ解禁に際して規制が先行するのは、実際に何が起きるかという経験の蓄積が国内にまだなく、慎重にならざるを得ないという側面がある。フォーブス誌は「政府は自分がやりたいことを分かっていない」「タスクフォース内に十分な知識がない」と指摘する。また、GGRアジアは、ロビー団体があるアメリカと違い、政府が専門団体から意見を取り入れられないことが影響していると分析する。
国内では慎重論が根強いが、海外メディアの間では規制が強すぎるという見方が主流になっている。国内に知見がない以上、カジノに対する賛否両方の立場から、海外の専門団体の意見を取り入れることも必要と言えそうだ。