防衛、鉄道、教育……フィリピンとの結びつきを強める安倍政権 現地も好感
日本とフィリピンとの連携が強まっている。ここ2週間ほどの間にも、軍事、インフラ、教育など多方面での協力関係が発表された。国際社会での影響力を強く意識する第2次安倍政権だが、まさにその戦略を反映した状況となっている。
◆中国との領海問題でフィリピン側を支援
国内でも議論を呼んだ平和憲法の解釈拡大だが、フィリピンなど恩恵を受ける国からは歓迎されているようだ。フィリピン・スター紙によると、日本政府はフィリピンの海の安全保障に大きく貢献している。フィリピンと中国は天然資源の豊富な南シナ海のスカボロー礁をめぐって対立している。フィリピンは周辺海域を同国の排他的経済水域と位置付けていたが、中国は独自の「九段線」を定め、自国の領海と主張していた。
国際法廷である常設仲裁裁判所の判決以降も、中国海警局(CMS)は軍事力で押し、領域を拡大してきた。フィリピン領海内で中国当局が中国船をエスコートしたのは最たる例だ。日本政府は平和的解決を試みるフィリピン側を一貫して支持しており、この姿勢が現地で好感されている。
一方で日本は、軍事力の脆弱なフィリピン海軍に対し、練習機「TC-90」5機の貸与を約束した。海難救助などへの活用のほか、偵察機としても利用できる。同紙はフィリピンの海の安全に貢献する日本を評価し、「日本の協力は深く多岐に渡り、どんなに強調してもしすぎることはない」(7月8日付記事)と表現している。
◆インフラ敷設や民間レベルでの開発で協力も
日本の存在感は、インフラ開発や民間企業のレベルでも増してきている。放送局ABS-CBNは、マニラ=クラーク線の鉄道建設に日本が融資を行うと報じている。首都マニラとクラーク国際空港を結ぶもので、今年建設を開始し、2020年までに営業を開始する予定だ。共同通信傘下のNNAの報道では、約5,665億円となる総事業費の全額を円借款供与で実現したいとしている。
他にも民間事業の例として、フィリピン・スター紙の別記事では不動産開発への日本企業の参加が報じられている。現地企業のFederal Land社がマニラの金融街で商業施設と住居の複合ビルの開発を計画している。日本の伊勢丹三越ホールディングスと野村不動産がこれに協力する。Federal Land社の親会社社長であるTy氏は、安倍首相とフィリピン大統領の友好関係によりこのプロジェクトが可能になったと見ているようだ。
◆教育面では奨学金で人材育成に貢献
最後に、教育面での協力も紹介したい。フィリピン・デイリー・インクワイアラー紙によると、日本の国際協力機構(JICA)がフィリピンへの奨学金を強化する。社会経済分野の人材育成を目的として、これまで2億6400万円の奨学金を提供してきた。
フィリピンで毎年20人に大学院修士課程を提供しているほか、選抜された一部の人物は日本の大学で継続して研究することができる。フィリピン経済の持続的な発展を目的としているが、日本側としてもフィリピンの開発事例を蓄積できるメリットがあるとのことだ。
第2次安倍政権は、1次での反省を踏まえ、一貫して国際社会での影響力を高める外交戦略を取ってきた。フィリピンでは安全保障面以外にも経済や教育分野で他国の経済成長に貢献しており、同国からの信望は厚いようだ。