森友学園問題、海外メディアのとらえ方は? 気になる安倍政権への影響、学園の愛国教育
3月23日、国会で森友学園の籠池泰典理事長の証人喚問が行われ、同日夕方には日本外国特派員協会で籠池氏の会見が開かれた。これまで同学園の国有地払下げ問題について、掘り下げた報道をする海外メディアはあまりなかったが、証人喚問と会見をきっかけに、大手メディアが事件の詳細と安倍政権への今後の影響について報じている。
◆支持率急落。首相の信頼失墜
CNN、フィナンシャル・タイムズ紙(FT)、ニューヨーク・タイムズ紙(NYT)はすべて、籠池氏は非常に愛国主義者的な考えを持つ人物と報じており、自身の経営する学校で他国に対する差別的表現を使用したり、教育勅語を子供達に暗唱させたりしていたことを紹介している。このような人物が新設する学校の名誉校長が昭恵夫人であったこと、その学校がある時点で「安倍晋三記念小学校」と名付けられる予定だったこと、閣僚の1人である稲田防衛相までが、一時森友学園の弁護士であったことなどを上げ、いかにして安倍首相が事件に巻き込まれたかを説明している。
CNNは、読売新聞が行なった調査で、内閣支持率が先月から10%ダウンの56%と、2012年12月の第2次安倍政権発足以来、最大の下落となったことを紹介し、このスキャンダルが安倍首相の評判をかなり傷つけたと報じている。FTは今回の事件で、少なくとも政府は昭恵夫人の政治的役割について再考することになりそうだが、同時に右翼の歴史修正主義者と首相のつながりを大衆に思い起こさせたと述べている。
◆決定的証拠にはならず。政権へのダメージは少ない?
各メディアが注目しているのは、在任期間が戦後最長となる可能性のある安倍首相に、この事件が今後どの程度のダメージを与えるかだ。
安倍首相は国有地払下げへの関与を問われ、自身も昭恵夫人も一切関与していないと発言し、関わっていれば首相も国会議員も辞任すると明言している。FTはその証拠が出てくれば、首相にとって深刻なトラブルになると述べるが、籠池氏が公開した昭恵夫人付きの政府職員からのファックスは、首相または昭恵夫人の関与の証拠としては十分ではないと説明する。NYTも、籠池氏から出て来たのはファックスだけで、破滅的な新事実を出すことはできなかったと述べた。
籠池氏が昭恵夫人から渡されたと主張する100万円の寄付に関しても、CNNとFTは必ずしも違法ではないと指摘する。だが、寄付が事実だとすれば安倍首相が国会において議員を欺いたことになる、というのは両メディア共通の見解で、特にFTは首相辞任につながる可能性もあると述べている。
土地取引の値引きを誰が何のために決定したのかがいまだ明らかにされていないため、解明されるまではこの問題は続きそうで、刑事事件となる可能性もあるとFTは指摘。さらに、籠池氏と昭恵夫人の主張が食い違っていることから、夫人の証人喚問もあり得ると見ている。しかし結果として、この件で今後しばらくの間政府は経済改革に集中できないものの、最終的に安倍首相はこの危機を乗り切り、政権への脅威とはならないだろうとFTは述べている。NYTは、大衆は籠池氏には懐疑的なため、この事件に持続性はないというアナリストの見方を紹介している。
◆メディアが追うべきは国有地問題
海外メディアは、国内メディアの反応についても報じている。 NYTは、森友学園問題が1ヶ月間もトップニュースになっているとし、籠池氏の証人喚問を、日本のメディアが息を弾ませて報じたと述べている。もっとも同志社大学の村田晃嗣教授は、北朝鮮問題や日米関係など日本を取り巻く国際情勢を考えれば、明らかな犯罪やスキャンダルの証拠なしでは、一般大衆はどんどん飽きていくだろうと同紙に述べている。
FTは、戦前に戻るような教育を通し、小さな子供達に愛国心を教え込むことを目的とする森友学園の体質が、公的資金の誤用に関する表面上は軽微な事件をこのようなスキャンダルに発展させたとし、いまや問題の本質から話がそれてしまったことを示唆している。