日本“今後は捕鯨問題で国際司法に応じない”と宣言 海外の反応は?
2014年に国際司法裁判所(ICJ)で、日本の南極海での調査捕鯨が違法と判断されたが、新たなプログラムのもと、調査捕鯨の再開が近々予定されている。再開を前に、今後は捕鯨問題をICJに持ち込めなくすることを意味する書簡を日本政府が国連に送ったことから、捕鯨反対の国々から非難の声が上がっている。
◆日本は調査捕鯨継続の構え
オーストラリアなどの反捕鯨国は、2014年のICJの判決が、日本に調査捕鯨の継続を断念させることになると考えていた。ところが日本は、判決を調査捕鯨禁止とは受け止めておらず、「国際法及び科学的根拠に基づき、鯨類資源管理に不可欠な科学的情報を収集するための鯨類捕獲調査を実施し、商業捕鯨の再開を目指すという基本方針を堅持」することを昨年4月に示している(日本捕鯨協会ホームページ)。
日本はNEWREP-Aという計画を発表しており、年末までには調査捕鯨が再開されるだろうと、複数の海外メディアが報じている。ガーディアン紙は、これまでの捕獲目標の3分の1となるものの、2015年から2027年の間に、毎年333頭のミンククジラが殺されることになると説明。殺さなくとも、組織の一部を取って分析するなどの科学的なやり方があるはずだという批判も紹介している。これに対し日本側は、非致死的方法ではいくつかのデータを集めるのは不可能だと反論している(日本捕鯨協会ホームページ)。
ガーディアン紙は、捕鯨に文化としての重要性は残っているものの、鯨肉の人気は急速に落ちていると指摘する。このような意見に対し、日本捕鯨協会は、「そもそも鯨を食べる機会が減ったのは、商業捕鯨モラトリアム(一時停止)によって、鯨肉の流通量が大幅に減ったから」とし、「食べなくなったのではなく、食べられなくなった」と主張し、反捕鯨国の一方的な意見に反論している。
◆新たな提訴を恐れた対ICJ策?
調査捕鯨再開に加え、反捕鯨派を怒らせているのが、10月6日付で日本が国連事務総長宛てに出した書簡だ。国連の条約集(UNTC)によれば、「海洋生物資源の調査、保全、管理ないし開発から生じる紛争は、いかなるものでも」、日本が受諾しているICJの強制管轄権を適用しないという内容が含まれている。オーストラリア国立大学の国際法教授、ドン・ロスウェル氏は、「NEWREP-Aが、ICJに持ち込まれないよう、日本が先手を打ったようだ」と述べている(シドニー・モーニング・ヘラルド、以下SMH)。
アメリカの動物福祉団体、『ヒューメイン・ソサイエティー』のCEO、ウェイン・パーセル氏は、同団体のブログで、来年1月より日本は国連の非常任理事国となるのに、国際法の原則を維持する国連機関の決定を回避する戦術を取るのかと批判した。SMHによれば、豪連邦環境大臣のグレッグ・ハント氏は、「日本の行動の意味するところについて、法律家の意見を聞くつもりだ」と述べ、新たな法的手段を取る可能性も示唆している。
◆国内からも懸念
日本国内でも、政府の動きに警鐘を鳴らす声もある。国際法の専門家で、神戸大学大学院教授の柴田明穂氏は、Facebookを通じ、「明らかに調査捕鯨の再開は国際法的に危うい、少なくともICJに持って行かれるのはいやだ、というメッセージです。『法の支配』を標榜する日本としてはいかがなものでしょうか」と述べている。
水産学者で三重大学生物資源学部の准教授、勝川俊雄氏は、日本は領土問題をICJで話し合うことを提案しているのに、「解決すべき領土問題を抱える我が国が、数少ない国際紛争の解決の手段を、ちゃぶ台返ししてしまうのは、得策とは言えないでしょう」とし、「ますます国際社会の理解が得られないとおもう」とツイッターで意見を述べた。
国際捕鯨委員会の森下丈二日本政府代表は、「外務省に聞いてほしい」と述べ、この件に関するコメントは避けたという(SMH)。捕鯨を守るために、一度承諾したルールを受け入れないと国際社会から批判されているのであれば、民主主義国家としては恥ずかしい限り。日本政府からの誠意ある説明が、早急に求められる。