日本の数値は見せかけ? 温室ガス削減目標を海外批判 基準年は過去2番目の排出量

 政府は、2030年までに温室効果ガスの排出量を2013年比で26%削減するという目標案を、30日に示した。今年末にパリで開かれる国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)に向けたものだ。この目標が低すぎるとして、一部の海外メディアは批判的な論調で報じている。

◆見せかけの高い目標値
 アメリカは2025年までに2005年比で26-28%の削減、EUは2030年までに1990年比で40%の削減を掲げているが、それぞれの目標を年度比で比較すると以下のようになる(ただし、日本とEUは2030年まで、アメリカは2025年まで)。

日本 アメリカ EU
2013年比 26% 18-21% 24%
2005年比 24.5% 26-28% 35%
1990年比 18% 14-18% 40%

 2013年を基準にすれば、日本が一番達成しているように見えるが、京都議定書の基準値である1990年の値からすれば、日本の目標値は決して高いものとは言えない。

 このことを、ロイターは「日本政府の担当者は2013年を基準として使いたがっている。他の主要先進国より高い削減目標を示すことになるからだ」と批判。

 米ブルームバーグも、気候変動問題で国際的に大きな役割を果たしているCANインターナショナルのディレクターであるワエル・マイダン氏の「(日本の案は)環境問題で日本をグズの位置に追いやっている」という言葉や、グリーンピース・ジャパンの高田久代氏の「ほとんど詐欺に近い」という言葉を引用して、環境団体から厳しい批判を招いていることを伝えている。

◆2013年比にこだわる日本
 なぜ、日本政府は2013年を基準値として使用することを希望するのか。ブルームバーグが、その背景を説明する。

 日本は、2011年の福島の原発事故により、国内の原発すべての稼働を停止させた。その分の電力を補うために、石油などの化石燃料を燃やして発電する火力発電に大幅に頼ることになったのだ。 結果、2013年には日本は過去2番目に多い温室効果ガスを排出することとなった。そのため、日本政府は2013年度を基準にしたいのだ。

 だが、ブルームバーグは批判の手を休めない。「日本が即座に化石燃料への依存を高めたことは理解できる一方で、猶予期間は終わったのだ」と、ロンドンを拠点とするNPOの「E3G」が報告書で示した言葉を引用。さらに同団体の、再生可能エネルギー分野の成長を制限することで日本は世界的な潮流から大きく外れていっている、という意見を掲載している。

◆さらなる改善への可能性
 APは、削減案で示された電力の比率に注目。削減案では、石炭火力発電26%、原発20-22%、天然ガス火力発電27%、石油火力発電3%、再生エネルギー22-24%となっている。現在のところ原発はすべて稼働を停止しているので、政府は2030年までに原発が日本の電力源の20%強となるよう、再稼働を目指しているということだ、とする。

 APは、政府の諮問機関の外部有識者の中ですら、再生可能エネルギーの拡大でもっと高い目標を設けていいのでは、という考えがあることを報じる。「2030年までに太陽光や風力は積み増す余地がある」との高村ゆかり・名古屋大教授の発言を伝えている。

 ロイターは、日本はすぐにでも最終案をまとめ、6月にドイツで行われるG7の会合で発表する予定だと伝えた。ブルームバーグは今回の日本の削減案は一般からの意見を受け付け、さらに議論を重ねた上で、最終的に国連に提出されるとし、最終案までに改善される可能性があることにも触れている。

Text by NewSphere 編集部