地方自治体は“競争せよ、さもなくば財源を失う” 日本政府の最後通牒に海外も注目

 地方の活性化は、日本の将来にとって決定的に重要だ。少子高齢化と人口減少の問題は、日本全体を今後ますます覆うことになる。地方では、若者が職を求めて大都市圏へ向かうため、この問題が先鋭化している。安倍政権は「地方創生」を最重要課題と位置づけている。

◆石破大臣、地方自治体に自ら考え行動することを求める
 ブルームバーグは、石破茂・地方創生担当大臣にインタビューを行い、政府が地方自治体に変革を求めていることに焦点を当てて報じた。石破大臣は、日本が巨額の負債を抱えているいま、公共事業で地方が潤うという図式はもはや維持不可能だとし、地方活性化のために地方自治体が自ら考え、努力するよう求めている。公共事業費は、ピーク時の1998年度には14.9兆円だったが、来年度予算では5.97兆円となっている。

 政府は、2015年度から5ヶ年の方針として、「まち・ひと・しごと創生総合戦略」を提示している。その中で、「地方は、人口減少を契機に、『人口減少が地域経済の縮小を呼び、地域経済の縮小が人口減少を加速させる』という負のスパイラルに陥るリスクが高い」と指摘している。石破大臣はブルームバーグに対し、人口問題への取り組みはすでに立ち遅れているが、手に負えなくなるのを防ぐには、今が最後のチャンス、と語っている。

 政府は「地域再生制度」として、雇用の創出や経済活性化などに取り組む計画を立てた自治体に対して、財政、金融等の支援を行うとしている。ブルームバーグは、おそらくこの制度に関連して、「競争せよ、さもなくば財源を失う」が日本政府から地方へのメッセージだ、と伝えた。石破大臣は「努力をしている地方と、そうでない地方とで扱いを平等にしたら、国全体が駄目になる」と語っている。

◆改革派の知事候補、敗れる
 地方活性化を目指す安倍政権の取り組みに対して、当の地方はどのように受け止めているか。実例の一つが、11日に行われた佐賀県知事選だった。

 結果は、地元農協の推薦する山口祥義氏が当選し、自民党の推薦する樋渡啓祐氏は敗れた。前・佐賀県武雄市長である樋渡氏は様々な行政改革を行い、市を「日本で最も住みたい場所」の一つに変えたことで有名だ、とウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙は報じる。安倍首相は樋渡氏を、地方経済活性化のモデルとして提示したい考えだったようだが、失敗に終わった。

 また同紙は、この選挙を、安倍政権と農協との戦いとして取り上げていた。安倍政権は、農業を成長戦略の重要分野ととらえている。収益性と競争力を強化するため、TPP加盟や農協改革の推進を試みている。当然、農協はこれに強く反発する。知事選の結果を受け、農協改革への抵抗が強まる可能性が高い。

◆日銀は地方債を買い占めるべし、という別角度の提言も
『ブルームバーグ・ビュー』のコラムニスト、ウィリアム・ペセック氏は、日銀の金融緩和は成果をあげていないと批判し、地方の成長に期待することが有効ではないか、と述べている。具体的には、日銀は地方債を大量に買い取ることを考慮すべき、と主張している。

 未償還の地方債の総額は、3月末にはざっと1.7兆ドル(約201兆円)に上る。日銀はこれらを可能な限りたくさん買い占めるべき、と同氏は語る。そうすれば地方自治体は、税収を利払いに充てる必要が減り、その分を地域再生計画に回せるようになる。さらに、地方各地で投げ売りされている不動産や、不良債権化した公共建造物の買い上げも提案している。

 もちろん、これらには明確なリスクが大量にある。地方自治体の放漫経営を助長する、新たなバブルを引き起こす、財政危機の種をまく、などだ。しかしペセック氏は、それらは承知の上だ。日銀が、デフレを終わらせるためには「何でもする」と言いながら、失敗し続けていると、やがて投資家が日本から投資を引き上げるようになってしまう。日銀がいま行っている「何でも」は、うまくいっていない。黒田総裁はもっと革新的になる必要がある、と氏は主張している。

Text by NewSphere 編集部