日本の武器輸出、拡大阻む壁とは? 安倍首相は国民の説得が急務と海外報道
昨年4月の閣議決定で、「武器輸出三原則」に代わり「防衛装備移転三原則」が導入された。日本の武器輸出の方針が、条件付きながら輸出可能へと変わった。これを受けて、日本の武器輸出の現状を、海外メディアが議論している。
◆続々と進む、日本の武器輸出・共同開発
武器輸出三原則が撤廃されて以来、すでに複数の武器輸出の契約が進行している。米製パトリオット迎撃ミサイルに使われるジャイロスコープの輸出が認められた。イギリスとは、戦闘機用の空対地ミサイル技術の研究プログラムを立ち上げた。オーストラリアとは、そうりゅう型潜水艦12隻の輸出交渉が進んでいる(ワシントン・ポスト(WP)紙)。
また、フランスと、武器の共同開発や輸出拡大など、防衛装備品協力に関する協定についての話し合いが行われることや、イギリスにP-1哨戒機を売り込んでいることも伝えられている(外交ニュースサイト『ディプロマット』)。
さらに、カナダのニュースサイト『デジタル・ジャーナル』は、武器輸出三原則変更前に、防衛・安全保障に関連する製品の展示会「ユーロサトリ」に、13の日本企業がブースを設置し、装甲車や地雷除去機などを展示していたことを伝えている。
◆方針変更は安全保障強化のため 中国は懸念
WP紙は、武器輸出三原則の撤廃は、安倍晋三首相による、日本をもっと「普通」の立場のある国にしようとする努力の一環だ、と伝えている。ディプロマットは、武器輸出が日本の安全保障強化に重要な役割を果たしていることを指摘している。日本の防衛関係者は、「こういった部品をアメリカに提供することで、アメリカとの関係がさらに改善されると信じている」と語ったという。
オーストラリアも同様に、アメリカへの同地域へのコミットに期待しているようだ。ディプロマットは、新型潜水艦の日本からの購入を、この文脈で報じている。
一方中国は、日本のこうした動きに対し、警戒を示している。昨年4月には、中国外務省副報道局長・洪磊氏が、「日本には、歴史の教訓を汲み取り、アジア隣国の安全面の関心事を重視し、域内平和や安定に利することをしてほしい」など憂慮を表明した。
◆壁は国民の抵抗感、防衛関連企業のジレンマ
しかしながら、最大の障壁は、日本の防衛関連企業のジレンマだ、とWP紙とディプロマットは指摘する。
防衛関連の大企業の関係者は、防衛輸出拡大の見込みを話すことさえためらってきたし、世界市場で展開する機会を振り払ってきた(WP紙)。
さらに、そのほとんどは、防衛関連製品が売上に占める割合は非常に小さい。軍事ビジネスに対する日本人の抵抗感が非常に強いため、「企業は武器輸出に反感によるほかの製品への影響を懸念している」という(拓殖大学海外事情研究所教授の佐藤丙午氏、WP)。
ディプロマット誌は、安倍首相は海外政府に日本の武器を購入するよう説得する前に、国民に対し、日本の武器輸出拡大がどのように国益と国際平和につながるか、はっきりさせるべきだろう、と締めくくっている。