2分でわかる公明党の政策:軽減税率導入

12月14日に投開票される衆院選に向け、NewSphereでは各党の政策を深く知るため、1)経済成長、2)財政戦略、3)外交・安全保障の観点から、7点質問を行った。公明党の回答は下記の通り(下線は編集部が付与)。

◆公明党の回答
1)人口減少が進む中、無理に経済成長を追うべきでないとの思想も出てきています。成長と平等、どちらに重点をおきますか。

長年日本経済を取り巻いていた閉塞感を打開するため、行き過ぎた円高を是正し、デフレ経済からの脱却を通して経済成長による豊かさを家計や中小企業、地方へと行き渡らせることこそ、公明党がめざす経済再生への道です。

その意味で、アベノミクス第一弾によってグローバルに展開する輸出企業を中心に企業収益は大いに拡大し、今年度は企業収益、雇用情勢は大きく改善、賃上げの動きが広がるなど、経済はプラス成長へとはっきりと反転し、好循環が生まれ始めています。この流れを止めることなく、確実なものにしていく必要があると考えます。

しかしアベノミクスは道半ばであり、急激な円安、物価上昇に賃金上昇が追いつくタイムラグによって、地方や中小企業にはその実感が乏しいことも認識しています。

また、GDPや雇用の約7~8割を占める地域経済の活性化なくして日本経済の再生は無い、との考え方の下、地方経済の好循環に今後本格的に取り組むべきと考えています。

その意味で、グローバル経済をけん引する企業による経済の好循環と、地域経済をけん引する企業による経済の好循環を同時に起こすことにより、「成長と国民一人ひとりの豊かさを実現する」ことが、今後の日本経済にとって重要であると考えます。

併せて、人口減少社会における地方の生活機能維持・強化や、多様なライフスタイルに応えるために、都市から地方への機能移転、人材移転、持続可能な地方経済の構築のために全力を尽くしてまいります。

2)経済成長のための政治の役割について、規制緩和/内需拡大など方針を伺えますか。4年以内に実現したい政策を挙げてください(3点まで)

1.消費税10%引き上げ時の軽減税率導入
2.成長戦略の実行
3.地方創生

経済成長のための政治の重要な役割は、政策の予見性を与えることだと考えます。
特に1については、消費税8%への引き上げによる個人消費の影響がかなりのインパクトであったことを鑑みると、2017年4月の消費税率10%引き上げ時には、個人消費の中でも毎日の買い物に欠かせない食料品等に対して軽減税率を適用することが、生活者の暮らしを下支えし、消費マインドを冷やさないためにも不可欠だと考えます。

2については、自公政権2年間で日本再興戦略を策定・実行し、具体的な成果をあげつつありますが、これを引き続き着実に実行するとともに、今後は特に地方創生を促す観点から、地方に需要を取り込むため、「食」「自然」「伝統文化」を活用した観光振興や、地域の特産品の開発を後押しして海外などへの販路開拓を強力に推進していきたいと考えます。また、地域資源を活用した環境・エネルギー分野の育成、農林水産業の大規模化、6次産業化を進め、需要創出や雇用拡大につなげていきたいと考えます。

3については、国として50年先の日本のあるべき姿を見据えた「長期ビジョン」と、それを踏まえた5か年計画の「総合戦略」を示すとともに、仕事の創出、人の流れの転換、持続可能なまちづくりに焦点を当て、地方が主体的に特色ある地域づくりを進めるための支援施策を用意するなど、全力をあげて取り組みます。

3)社会保障制度の維持が危機と指摘されて久しいです。国際的にみると日本の制度は「低負担、中福祉」と言えますが、今後は「低負担・低福祉」、「高負担・高福祉」、どちらを目指すべきだと考えますか

世界に例を見ない日本の高齢社会を考えると、「低負担・低福祉」では、社会保障の充実や安定化は難しいのが実態だと考えます。一方、北欧のような「高負担・高福祉」は、日本に適したモデルなのかどうか、国民的な議論にまで至っていないと考えられます。

こうした議論を踏まえつつ、超高齢社会に突入した日本は、自助、共助、公助の適切なバランスを考えながら、独自の福祉モデルを構築するべきと考えます。そのため、住み慣れた地域で高齢者を支える「地域包括ケアシステム」の構築に取り組んでいます。また、充実した福祉のためには、社会保障の効率化、重点化も喫緊の課題です。例えば、後発医薬品の使用促進、レセプトの電子化による事務費用の削減等を推進していきたいと考えています。

4)上記の経済、財政政策に関し、財源をどのように捻出しますか。特に消費税に対しては、いつまでに何%まで増税すべきと考えますか

消費税については、平成29年4月に10%に引き上げます。

財源の確保にあたっては、早期に「中期財政計画」を策定するなかで、歳出面において、各年度の優先課題に重点を置くとともに、大胆なスクラップアンドビルドを行うことによりメリハリをつける必要があります。2020年の財政健全化目標に向けて、歳出削減努力や行政の効率化についてできるところから着実に実行する以外にありません。

また、社会保障制度については、必要な財源を確保しながら、国民生活に支障が出ないよう、優先順位を決めて着実に進めていきます。特に、子ども・子育て支援新制度の着実な実施と「待機児童解消加速化プラン」に基づく保育の受け皿40万人分の確保や、介護人材確保のため介護職員の処遇改善を図るとともに、認知症対策は最優先で取り組むべき課題と考えます。

5)2017年に消費税増税を行う場合、どうやって悪影響をおさえますか(軽減税率、給付など)

2017年4月の消費税率10%引き上げ時には、課税の公平性を維持し、国民の消費税に対する理解を得るため、個人消費の中でも毎日の買い物に欠かせない食料品等に対して軽減税率を適用することが、生活者の暮らしを下支えし、消費マインドを冷やさないためにも不可欠だと考えます。

また、10%への引き上げに際して、5%から8%に引き上げた際に行った反動減対策の効果も検証しつつ、反動減を緩和し景気の下振れリスクに対応する激変緩和措置を講ずることも考えます。

6)現時点で、日本の外交における最大のリスクは何だと考えていますか。そのための対策はどうあるべきと考えていますか

東アジアの平和と安定を構築する上で、中国、韓国との関係改善は不可欠です。昨年11月、ようやく日中首脳会談が実現しましたが、本格的な改善への取組みはこれからです。韓国とは、依然として安倍総理と朴大統領との首脳会談が実現しておりませんが、日中韓の枠組みで首脳会談が模索され始めています。こうした流れをより確かなものとするため、首脳レベルは勿論、政治、経済、文化などあらゆる分野を通じて、人的交流や協力関係を拡大していくことが重要と考えます。

戦後70年、我が国は一貫して平和国家としての道を歩んできました。憲法の平和主義や国際協調主義の精神に基づき、専守防衛や非核三原則を堅持しつつ、国連の平和活動への参加など国際社会の平和と安定にも積極的に寄与してきました。

こうした国際社会から高い評価を得ている平和国家としての基本姿勢を今後も貫きながら、物事を対話によって平和的に解決する外交力を基盤に、唯一の被爆国としての核軍縮の主導的取組みや、貧困や飢餓など国境を超えたリスクから人間を守る「人間の安全保障」分野への貢献など、日本独自の平和外交を推進すべきと考えます。

7)4年以内の憲法改正は必要でしょうか。必要な場合、どのように国民に必要性を説こうと考えていますか。

法改正の手続きを定めた国民投票法が施行されましたが、今後さらに国会で着実に審議を重ねるとともに、国民的な議論を深めていくことが最も重要であると考えます。現時点において、いつまでに改正すべきということは、想定しておりません。

◆編集部の補足
丁寧な回答をいただいた。

アベノミクスの基本方針は踏襲しつつ、地域経済の活性化を強く主張している。公明党の重点政策集でも、この点の記述が目立った。中小企業の資金繰り支援、給付措置の拡大や若者の正規雇用拡大などを挙げており、雇用安定・賃金上昇→消費の拡大→企業収益の拡大…という構想のようだ。

軽減税率導入へのこだわりもあわせ、自民党よりも「大きな政府」志向が強いといえる。社会保障については負担増でも給付減でもなく、地域扶助と効率化を重視する構えだ。試算が気になる。それ以外にも、具体的な数値目標の記述が少ないのは、与党ゆえの慎重さだろうか。

外交課題は、自民党と異なり中韓を名指しし、関係改善の必要性を挙げている。自民党は「積極的平和外交」、公明党は「日本独自の平和外交」という表現の違いも興味深い点だ。

Text by NewSphere 編集部