日米韓の防衛機密共有 “反日より安保優先すべき”と韓国紙主張

朴槿恵大統領

 防衛秘密情報共有のための覚書が、日米韓の3か国で締結されることになった。日本に対する不信感が根強い韓国だが、北朝鮮という大きな脅威とアメリカの存在が、韓国政府を動かした形だ。

◆批判をかわす苦肉の策
 朝鮮日報によれば、「共有される情報は北朝鮮による核開発とミサイル関連の情報に限定され」、「協定」ではなく、「3か国の国防当局による約束を文書化する」もの。正式に発効すれば、韓国側はアメリカを通して日本に情報を提供し、日本も逆の経路を通じて韓国側に情報を知らせることになるという。

 日韓の交流がアメリカでワンクッションを置き、対象も北朝鮮の核・ミサイルに関するものに絞られた理由は、「両国内部の批判世論を意識したため」と中央日報は指摘する。同紙は、「日本の右傾化を考慮し、日本との軍事協力は時期尚早だとして反対する意見も依然として少なくない」と述べ、国防部の当局者の「批判的な見方があるため、韓日間の直接的な交流はしない」というコメントを掲載している。

◆日韓協定はお流れに
 実は日本と韓国は、2012年の6月に、防衛情報共有のための秘密保持を約束した、軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の調印を予定していた。しかし、朝鮮日報によれば、韓国政府が非公開の緊急案件として会議にかけようとしたため、「秘密協定だ」と批判され、調印式の数時間前に韓国側が延期を申し入れ、御破算となった経緯がある。

 当時、日本経済新聞の秋田浩之編集委員は、年末の大統領選を前に、「旧日本軍による慰安婦問題がくすぶるなか、日本の自衛隊との協力に踏み出すわけにはいかない。韓国世論の反発を買ってしまう」と韓国の与野党が判断した結果の措置だったと指摘。これにより、日本の関係者だけでなく、アメリカをも落胆させてしまったと述べている。

 中央日報は、今回の覚書締結には「何よりも米国が積極的だった」と述べ、アメリカとしては「北朝鮮の軍事脅威」はもとより、「中国とロシアを牽制するために韓日米三角安保協力を強化する必要性が高まった」ためと指摘している。

◆安保優先が国益
 韓国内では、今回の覚書締結に対し、「日本のメディアが報じたことで話し合いが最終段階にあることを政府はしぶしぶ認め、署名のわずか3日前に発表した(朝鮮日報)」、「国民感情に引っかかり取り下げた事案(GSOMIA)をこっそりと復活させ十分な説明をしなかった(中央日報)」と多くの批判が出ているという。

 しかし、韓国メディアは、「(北朝鮮の核・ミサイル技術が高まる)現状では、日本との情報共有の必要性が徐々に高まっていることは認めざるを得ない(朝鮮日報)」とし、日本が保有する人工衛星やイージス艦などの情報収集装置の有益性を説き(中央日報)、国民に理解を求めているようだ。

 特に中央日報は「国家安保という核心的考慮事項を国民感情というものさしで裁断しては困る」と述べ、「右傾化で韓国を刺激する日本が憎いからと安倍政権とはどのような協力もできない」という考え方を戒める。さらに、政局のため「外交慣例を破って」GSOMIAを取り消して2年後の今、「世論の顔色をうかがって安保問題からふらふらと退く姿はこれ以上あってはならない」と釘をさしている。

Text by NewSphere 編集部