日本の最大野党は自民党内に? 共産党躍進も“法案通せぬ”と英誌厳しい指摘

 12月14日の総選挙では、自民党と公明党の圧勝を許し、連立与党への対抗勢力として存在を見せた野党は1つもなかった。原因として、政党内部での分裂や、政策に対する党の結束のなさが海外メディアで指摘されている。

 そんななか、唯一躍進したのが、共産党だった。共産党は他の野党と共闘することは、沖縄以外ではめったにないため、大きな勢力をなし得ず、共産党への票は無駄になるという見方が強いが、若い世代からの共感を得ているのではないかという見方も示された。

◆党内の分裂や政策の不一致で勢力を失った
 東アジアフォーラムに寄稿した、オーストラリア・アデレード大学アジア研究センターのプルネンドラ・ジェイン教授は、野党の大敗は野党の分裂と政策の不一致だと指摘する。

 ジェイン氏は、日本は、長らく与党第一党は自民党が占める政権を維持してきており、野党が自民党の大きな脅威となることはなかったと言う。

 2009年の総選挙では、民主党は大勝したものの、2012年の選挙では、党内分裂を起こし政策における党の結束を見せれなかったために、大幅に議席を減らす結果となってしまったと指摘する。

 その後、「第三極」としてさまざまな政党が結成されたものの、内部分裂や政策の不一致から勢力を失ったと指摘。そのため、野党や第三極政党は、与党としての地位を得たいと思うのなら、自分たちの政策や選挙戦略をしっかり見据えるよう促している。

◆立て直しを誤った民主党――右派も左派も取り込む自民党
 これに対しては、英エコノミスト誌も同じような指摘を行っている。

 民主党の苦しい状況の理由として、2012年の大敗以後の党の立て直しを怠ったせいだと指摘。代表の海江田万里氏は党の政策をきちんとまとめることができず、また選挙への準備不足も著しく、十分な候補者を立てられていなかったと述べた。また他の政党も、みんなの党や維新の党など、過剰な個人プレーのために党内の分裂を招いていると述べた。

 だが、エコノミスト誌は、野党の苦境の最大の要因は、野党の役割がすでに自民党で果たされているせいだと指摘する。自民党自体がさまざまなグループの寄せ集めで、集団的自衛権や改憲などを推し進める右派的な政策も、昇給や女性の権利などの左派的な政策も自身に取り込んでいるため、野党が特色を出しづらいと述べる。

◆躍進を遂げた共産党だが……
 そんななか、今回の選挙で躍進を果たしたのが共産党だった。8議席から3倍に近い21議席を獲得。

 前述のジェイン氏も、選挙では日本共産党のみが「真の勝者」だったとしているが、共産党は他の政党と連立を組まないため、共産党の政策決定における影響力は弱いと述べている。エコノミスト誌も「(共産党への)票は大部分無駄になるだろう、なぜなら共産党は新法案を通せる見込みがないからだ」と指摘する。

 だが、イギリスのモーニング・スター紙は、共産党の躍進に希望を見出している。その理由としては、共産党が若い世代に支持されていることを挙げている。

 まず、2008年に志位和夫委員長が衆議院予算委員会での質疑に立ち、日雇い労働者や派遣労働の深刻な実態を告発し、政府に対策を要望したビデオがインターネット上で広まり、若い世代に大きな反響を呼んだことを挙げた。

 また、若い世代が利用しているソーシャルメディアを活用したり、最近では党のPRアニメ「カクサン部」を制作して、わかりやすく党の政策をアピールしていることを述べた。

 将来を担う世代への浸透が、共産党の92年の歴史を続けさせる原動力になるのでは、との見方を示した。

Text by NewSphere 編集部