日本のCO2排出が過去最悪に インドネシアでの石炭火力発電所建設援助に強い批判も

 日本の昨年度のCO2排出量が過去最悪となった。環境省が発表した暫定値によって明らかになった。ロイターは、原発停止による化石燃料消費の増加が原因だと報じている。

 またワシントン・ポスト紙(WP)は、日本がインドネシアの石炭火力発電所建設に巨額の融資を行い、これが国連の地球温暖化対策資金として拠出されたことを、その趣旨に逆行すると問題視する記事を掲載している。

 こうした日本の地球温暖化対策の綻びが指摘される中、ペルーで開かれていた国連気候変動リマ会議(京都議定書締結国会議第10回会合)が12日に閉幕。中国などから早急に新たな削減目標を出すよう求められるなど、日本への国際社会からの圧力も強まっている。

◆「CO2削減」と「反原発」の板挟みに
 環境省によれば、昨年度の日本のCO2排出量は前年比1.6%増の13.95億トン。2005 年比で1.3%増、1990年と比べると10.6%増で、過去最大となった。ロイターはこれを、「日本は世界第5位のCO2排出国だが、2011年の福島危機後の原発停止のため、排出削減目標を引き下げた。そして、(火力発電のための)石炭消費量は記録的なものとなった」と報じている。一般的に、石炭の燃焼は、石油や天然ガスを上回る温室効果ガス(CO2)排出の最大要因とされている。

 CO2排出量1位の中国、2位のアメリカ、そしてEUは、来年パリで開かれる国連の会合に向け、この数ヶ月にうちに新たな削減目標を発表し、地球温暖化防止に積極的な姿勢を見せている。しかし、日本はまだ新目標を「議論中」だ。リマの地球温暖化会議でも日本の代表は「できるだけ早く削減目標をまとめたいが、タイムリミットは設けていない」と語るにとどまった。これに対し、中国の代表は「日本が野心的な目標を立てることを、中国だけでなく、世界中が期待していると思う」と批判を込めて語ったという。

 しかし、ロイターは、「日本政府は、石炭火力の割合を40%に増やす計画を立て、火力発電所建設の規制緩和を行ったため、新目標で打ち出せる削減幅は限られてくる」というアナリストの見方を紹介している。併せて、「安倍晋三首相は原発を再稼働したがっているが、フクシマ後に原発に不信感を抱くようになった有権者から強い反発を受けている」と記し、国内外の両側からの圧力で板挟みになっている日本の難しい立場を説明している。

◆温暖化防止の名目で石炭火力発電所に融資?
 一方、日本がインドネシアの石炭火力発電所の建設に対し、国連の地球温暖化対策の名目で融資を行ったと、APがすっぱ抜いた。この報道を元に、WPが日本と国連の監督体制を批判する記事をまとめている。
 
 APの調査報道によれば、日本政府は、国連の温暖化対策の名目で、国際協力銀行(JBIC)を通じて、ジャワ島東部の『パイトン火力発電所』の建設に7億2900万ドル、同西部の『チルボン火力発電所』に2億1400万ドルの融資を行った。両発電所は、石炭を燃料としている。WPによれば、この温暖化対策の融資は2009年に国連で先進国間で合意したもので、2020年までに発展途上国に対し年間1000億ドル(当面は3年間で300億ドル)を融資し、日本がその半額を提供する計画だという。

 WPは、本来、温暖化対策のために使われるべきの資金を、CO2を大量排出する施設建設に用いるのは本末転倒だと批判。またAPが、国連が認定した書類を調査したところ、石炭火力発電所に直接援助をしたのは日本だけだったとして、日本批判を強めている。加えて、「資金が効果的に使われているか監督する機関はなく、温暖化対策融資の定義もはっきりしない」と、国連の体制にも異議を唱えている。

 日本の外務省は、WPの取材に対し、「石炭以外の燃料を使うことができない国もある。その中でCO2削減に繋がる最良の技術を提供したい」と語り、インドネシアの施設に最新の環境対策技術が使われていることを強調した。『チルボン火力発電所』のCO2排出量は一般的な石油火力発電所よりもやや多く、旧型の石炭火力発電所よりは20%ほど少ないという。

◆排出量1位の中国も積極的な削減策を発表したが・・・
 APは上記の“特ダネ”とは別に、排出量世界上位6ヶ国のCO2対策をまとめた記事も配信している。それによれば、順に、中国(2013年排出量:110億トン)、アメリカ(同58億トン)、インド(同26億トン)、ロシア(同20億トン)、日本(同14億トン)、ドイツ(8億3600万トン)となっている。

 中国のCO2排出量は、このままいけば2040年までに2倍になるとも試算されている。APは、中国政府はこれまで、CO2削減に熱心でなかったとしているが、ここにきて方針を転換。アメリカとの交渉の末、先月のオバマ大統領訪中に際して、2020年までにCO2排出の増加を止めると宣言した。その後さらに、2020年までに石炭の使用を電力生産全体の62%程度に留めるという具体策も打ち出した。

 しかし、これらについてAPは「政治的には大きな意味があるかもしれないが、地球温暖化には大きな効果は及ぼさないだろう」と評している。

Text by NewSphere 編集部