日本政府、武器輸出支援に積極姿勢 イスラエルが取引拡大に期待も、“主役にはなれない”
日本政府は、武器輸出の拡大を目指し、防衛機器メーカーの海外への売り込みや国際共同開発プロジェクトへの参加を積極支援する方針を固めたようだ。その具体策を探る諮問機関が設立されることになったと、ロイターが11月26日の記事でスクープした。こうした安倍政権の積極姿勢を受け、世界有数の“武器大国”のイスラエルのメディアも、日本の武器輸出に関する特集記事を掲載している。
◆衆院選後に諮問会議開催か
ロイターの報道によれば、政府は最近、武器輸出拡大のために防衛機器の開発・製造メーカーを支援する資金を捻出する方法の検討を始めた。その最初のステップとして、14日投開票の衆院選後に、金融や法律の専門家や学者、防衛企業の代表者ら10人程度による諮問会議が開かれるという。「匿名希望の4人の関係者」がロイターに明かした。
日本政府は中国の反応などに配慮して、この件に関して具体的なコメントを避けている。
この関係者らによると、既に有力な案として、国際協力銀行(JBIC)あるいは国際協力機構(JICA)のような、政府がバックアップする武器輸出版の資金融資団体の設立が検討されているという。また、海外のエネルギー関連事業などの融資を行っているJBICの権限を、軍需関連まで拡大する案などもあるという。
情報提供者の一人は、「諮問機関は、融資から取引の開拓、交渉プロセス、そして(売った武器の)メンテナンスとサポートまでバックアップする」とロイターに語った。そして、こうした事は早速、現在交渉が進行中のオーストラリアへの『そうりゅう』型潜水艦の輸出やインドへのUS-2飛行艇の販売などに適用される可能性があると、同メディアは記している。
◆イスラエル誌は「日本への武器輸出」にも言及
イスラエルの軍事専門誌『Israel Defence』は、「日本市場が目覚める」と題して、日本の武器輸出解禁の動きを特集した。同誌は、「ヨーロッパの防衛産業筋は日本の武器輸出解禁はもっとずっと先になると確信していた」とし、日本の動きを驚きを込めて伝えている。
そして、『そうりゅう』の輸出交渉や三菱重工によるパトリオット・ミサイルのコンポーネントと部品供給の件や、日本の多くの企業が今年初めて欧州の武器見本市に参加したことに触れ、「(武器輸出3原則に代わる)新たなルールは、(日本製の)発展型のプロトタイプや量産型兵器の輸出の道を開くだろう」としている。
ただし、同誌は日本の兵器が実戦を経験していないことを問題視する。さらに、「他国のライバルのようなメンテナンス、サポート能力に欠けている」とも指摘。当面は世界の武器市場のメジャープレイヤーにはなれないと見ている。
一方、イスラエル製の武器の日本への輸出については「より複雑なプロセスだ」としながら、「日本が今直面している脅威を見れば、最新型の武器の輸入をより受け入れやすくなっているように思われる」「イスラエルの武器輸出産業にとって、今こそが協力的な関係を結ぶチャンスだ」と期待を込める。そして、「日本のビジネス界の動きは遅く、契約成立には時間がかかる」「契約書にサインする前に信頼関係を築かなければならない」「鍵となるのは忍耐力と寛容さだ」などと、日本へイスラエル製武器を売り込むための具体的な“指南”までしている。
◆課題は「実戦不足」や「第3国への移転」
国際政治学者、道下徳成・政策研究大学院大学教授は、シンガポールの英字紙『The Straits Times』に、日本の武器輸出に関する論説を寄稿した。道下氏は、日本が武器輸出に力を入れ始めた主な理由を3つ挙げている。
1つ目は、「日本はもはや、非常に高価な自衛隊向けの国産武器・装備を購入し続けることができなくなった」というものだ。同氏は、90式戦車(700万ドル)とM1A1戦車(430万ドル)、F-2戦闘機(1億1100万ドル)とF-15戦闘機(2700万ドル)など、日米の兵器の価格を比較。国産兵器の販路を世界に拡大して価格を下げない限り、巨額な借金を抱える日本だけで支え続けることはできないとしている。
上記と合わせて、「最先端兵器をリーズナブルな価格で入手する唯一の道は、もはや国際的な共同開発に参加することだけだ」というのが2目の理由だ。そして、3つ目は、国連の平和維持活動に参加している部隊に武器や装備を拠出することが、「国際平和への貢献」につながるというものだ。また、これらに立ちはだかる課題として、道下氏は、売却した武器の第3国への移転問題と、やはり「実戦経験不足」などを挙げている。