与党圧勝で、安倍首相は防衛強化と原発再稼働推進か 海外識者が予測[2014衆院選]
4日、全国紙5紙(読売・朝日・毎日・日経・産経)が一斉に、14日投開票の衆院選に関し、与党の優勢を報じた。各紙、および共同通信が実施した世論調査(2・3日、電話調査中心)と、独自取材に基づく報道だ。
◆自民単独で300議席を超える勢い
公示前の衆議院の定数は480議席で、そのうち295議席を自民党が、31議席を公明党が占めていた。今回は定数が5議席削減されて475議席となったため、238議席で過半数となる。また参議院否決法案の再可決ができる317議席(定数の3分の2)に達するかも注目される。
朝日、毎日、産経は、自民党が300議席を超える勢いだと報じた。日経は、自民党が300議席をうかがう勢いであり、当選有力圏も含めると300議席を超える勢いだと報じた。読売は、自民・公明合わせて300議席を超える勢いだと報じた。とはいえ「まだ投票先を決めていない」と回答した人も多く、情勢は今後変わる可能性がある、と各紙とも断っている。
◆アベノミクスの推進力がさらに高まる?
フィナンシャル・タイムズ(FT)紙は、各紙の調査結果から、今回の選挙で自民党が圧倒的勝利を収め、日本経済に対する統率力を強化しそうだと報じた。また自民・公明の連立与党で、衆議院の3分の2以上という「圧倒的多数」を超えそうだと伝えた。実際にこのような結果になれば、「アベノミクス」に対する後押しということになるだろう、と語っている。
ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙も、自民党の圧倒的勝利という結果になれば、安倍首相に、日本の農産物市場の開放といった政策を推進する信任を与えるだろう、とみている。このような見方は、安倍首相自身が訴えているものと同様だ。首相は今回の選挙を、アベノミクスへの国民投票として売り込んでいる、とFTなどは報じている。
FT紙は、この世論調査の結果を受けて、4日の株価が上昇したようだ、と語る。どうやら投資家は、過去20年間で13人も首相が変わったこの国で、現在の政治情勢が継続するという見通しに元気づけられたようだ、とした。WSJ紙も、投資家らはおおむね、日本の政局は今後も安定だという兆候を好反応で迎えた、と語った。
◆アベノミクス以外の政策についても信任が与えられた、と首相が主張する?
けれどももし今回の選挙で、世論調査が示すように自民党が大勝した場合、首相はそれを、経済政策に対してだけの信任だとは受け取らないかもしれない。そのような観点から論じているのはブルームバーグである。勝利は、自衛隊を強化するという大望を推し進めるよう首相を励ますかもしれない、と記事は語る。
また、テンプル大学ジャパンキャンパス、アジア研究学科のジェフリー・キングストン教授は、「首相はその勝利で、抜き打ち選挙を不意打ちで取り決めたことの正当性が認められたと取るだろうし、彼の政策全てを実行することに対しての信任だと主張するだろう」とブルームバーグに語った。つまり、安全保障政策から原発再稼働、憲法改正にまで至るものだ。
調査が示すところでは、有権者は、安全保障、原発再稼働といった問題よりも、経済、社会保障のほうに基づいて選択を行いそうである、と記事は語る。安全保障、原発問題では、有権者は安倍首相と意見が異なる傾向がある、と述べ、何が信任されたのかについて、有権者と首相の間に認識のズレが起こり得ることをほのめかしている。また、ブルームバーグは今後の憲法修正の可能性に着目していた。
◆自民党以外に受け皿がない?
WSJ紙は、世論調査において、これほどまでに自民党が優勢となった理由について、自民党、安倍首相の功績というよりも、野党の側にむしろ原因があるのではないか、ということをほのめかしている。
7-9月期の日本のGDP(速報値)は、2期連続のマイナスとなり、アベノミクスに対していささか失望させるものであったにもかかわらず、今回の調査結果である、と記事は語る。また多くの有権者が、株価の急上昇、円安による企業の収益増にも関わらず、アベノミクスのプラス効果を感じていないと語っていることが、調査で示された、と記事は伝える。
衆議院の任期はあと2年残っていたにもかかわらず、首相が選挙に打って出たのは、弱体化している野党では、有権者の不満にうまく乗じることができないだろうと賭けたのだ、と記事は語る。そして、これほどすぐ行われる選挙を戦う準備が整っていなかった、意見の割れた野党集団から自民党が議席を奪って、この賭けはたぶんうまく行くだろうということを今回の調査は示唆している、と語っている。
FT紙は、今回の選挙の投票率が、記録的な低さとなった前回選挙をさらに下回りそうだ、とアナリストらが述べていることを伝えている。
※本文中「テンプル大学アジア研究学科のジェフリー・キングストン教授」は「テンプル大学ジャパンキャンパス、アジア研究学科のジェフリー・キングストン教授」の誤りでした。お詫びして訂正いたします。本文は訂正済みです。(12/9)