“安倍首相こそ適任”、“TPPで日本を助けよう” 米紙、解散総選挙に理解と期待
安倍晋三首相は18日、消費税の8%から10%への引き上げを18ヵ月延期するとの決定を明らかにした。また同時に、衆議院を21日に解散し、12月に選挙を行うと発表した。安倍首相は「政府が進めている経済政策は賛否両論ある。そして、抵抗もある。その成長戦略を国民とともに進めていくためには、どうしても国民の声を聞かなければならない」と述べた。
◆支持を固めるための解散総選挙
早期解散は、珍しいことではない、と英ガーディアンは報じる。1949年以降の24の政権のうち、4年間を全うしたのはたった4政権だからだ。
アベノミクスの審判を問う選挙だとの見方もあるが、安倍首相は元々、経済がすぐさま回復することはないだろうとみていた。ニューヨーク・タイムズ(NYT)紙は、有権者がより不満を募らせる前に支持を獲得しておこうとしているのだろうとの専門家の意見を取り上げた。
コロンビア大学のジェラルド・L・カーティス教授は、「解散の理由はただひとつだ。時が過ぎるのを待っていては、状況が悪くなる一方だという不安だろう」と述べた。「たった2週間前に多くの人が予想していた、6年間の安倍政権の政治的安定と支障のない政権運営という見通しは、今や過去のものだ」(NYT紙)しかし、2年前に大敗し野党となった民主党に比べれば、自民党の人気はまだ高い、と同紙は指摘。解散総選挙の実際の理由は、民主党や他の野党に付け入る隙を与えないためだろう、とみている。
◆国民に不人気な政策は先送りか?
ガーディアンは、安倍首相は憲法9条の改訂に熱心だ、と報じている。これについては論争が激しく、集団的自衛権行使への壁となっているように思われていた。連立を組む公明党も憲法改正に反対していた。
しかし7月、安倍政権は9条の再解釈を閣議決定することでこの難題を切り抜けた。再解釈が行われたことで、憲法改正には国会で3分の2の賛成が必要というのは理想的な歯止めに過ぎないということになった。ただ、安倍政権への信任を確保するためにも、過半数の議席獲得が重要であることに変わりはないだろう、とガーディアン紙は報じる。
今月16日に行われた沖縄県知事選では、自民党が推していた現職が敗れ、辺野古への基地移設反対派の翁長雄志氏が、地滑り的勝利を収めた。自民党には痛い負けだ。また、中国への強硬な姿勢には広い国民の支持を得ていたが、集団的自衛権行使については、いまだに世論も割れている。原発再稼働といった問題もある。同紙は、これらすべての課題は、支持率の低下で先送りとなるのではとみている。
NYT紙は、経済停滞が長引けば、安倍政権は終わりだろう。不景気の闇を払い、日本が元気を取り戻す策を講じるには、首相への高い支持率が必須だとのアナリストの見方を取り上げた。また、アベノミクスの失速で、国民に不人気な政策を遂行するにも支障が出てくるのではないか、としている。
◆安倍首相は適任と米紙
日本経済再生のために政策を進めてきた安倍首相だが、なぜ、アベノミクスがうまく働かないのかまだ明確な答えは出せない、とNYT紙は報じている。財政赤字を減らすため増税し、日本銀行が金融緩和をやりすぎたからか?市場開放策の痛みを恐れ、経済の回復基調を維持するのに必要な構造改革を断行する勇気がないからか?と疑問を投げかけた。
ワシントン・ポスト紙は、「日本の経済回復のためにアメリカにはもっとできることがある」と題する社説を掲載。今回の増税延期、解散選挙の決定に理解を示す。
また、同盟国アメリカは安倍首相の政策を支持するべきだと主張。ただ、その際にバランスが重要だと指摘。安倍首相の積極的な防衛姿勢は、アジアでのアメリカの利益に適い必要なものだが、経済面では、国民の反感を恐れて、雇用改革など実行を避けているものもあるからだ、としている。
とはいえ、同紙は、今のところ安倍首相に代わることのできる勢力は存在せず、結局、世界経済(さらに言えばアメリカ経済)にとって必要な、日本の景気回復を成し遂げる首相として、安倍晋三氏が最もふさわしい、と述べる。
さらに記事は、何よりもアベノミクスを助けることができるのは、早急なTPP締結だと述べ、それにより現在の非効率な農業や企業の慣習を改めることができると結論づけている。
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