「安倍首相にとっても賭け」…“消費税解散”の可能性を海外紙も報じる
衆議院の解散が、早ければ来週にも行われるかもしれない。年内総選挙の可能性について、投開票日は早ければ12月14日ともなり得る、などと日本の主要紙は軒並み報じている。12日朝には、自民党の谷垣幹事長と公明党の井上幹事長らが都内で会談し、年内の解散総選挙を想定した態勢作りを進めることなどについて協議したという(テレビ朝日)。
ただし安倍首相は、衆院解散総選挙について「全く考えていない」(9日)、「タイミングは何ら決めていない。臆測に基づく報道には答えない」(11日)と強調している。菅官房長官は、報道について記者会見では否定せず、決断は安倍首相一人のものであると発言した。
このタイミングで衆議院を解散する目的、総選挙が行われた場合の見通しなどについて、海外各紙も論じている。
◆消費増税延期で総選挙か
総選挙を行う主な理由は、来年10月に予定されている消費増税への反対意見が根強いためだ。フィナンシャル・タイムズ紙(FT)は、4月の消費増税の悪影響が大方の予想よりも大きく、長く続いていると指摘。実際、消費動向調査の結果は、10月まで3ヶ月連続下降し、既に5月の数値を下回っている。
7-9月期のGDPについて、速報値が11月17日、確定値が12月8日に発表される。この数値を受けて、首相は来年10月の消費増税を実施するかどうかの判断を下す。来年10月の増税は既に立法化されているので、延期する場合は、そのための法案が必要だ。ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)は、このために有権者の信任を得ていることを明確化したいのだろうと見る。
増税を延期した場合、安倍首相にとってのリスクは、世界最大規模の財政赤字が拡大し続けるということだ。IMFの見積りでは、GDP比245%まで拡大するだろう、とブルームバーグは述べる。しかし、FTによると、財政再建は経済の土台が安定してからでよい、と主張する政府関係者も存在する。
◆選挙戦に勝つことが総選挙の目的?
とはいえ、WSJがいうように、現時点で議席の60%を占め、政策の施行にこれ以上議席を必要としない安倍政権がわざわざ解散総選挙を行う理由があるだろうか。FTは、内閣支持率の下落を指摘し、「首相にとっても賭け」となる、という。
WSJは、解散総選挙を行う理由を3つ挙げている。
第一に、上記の消費増税延期に関する思惑。第二に、閣僚の過去のスキャンダルを探し出す暇をなくすべく、対立政党を選挙戦で忙殺すること。第三に、対立政党の準備が整わない状態で選挙戦を行うことで、現有議席を維持することだ。第三の理由については、ブルームバーグも同じ見解を持つアナリストを複数引用している。
また、FTは、安倍首相が今回の選挙戦に勝てば、来年9月の自民党総裁選で再選されるチャンスも増すと述べている。
解散の可能性について、ブルームバーグは識者の調査結果も報じている。それによると、政治評論家の浅川博忠氏は、来週解散の可能性が30%との見方を示す。残り70%は来年7月の通常国会終了後だ。ロバート・フェルドマン氏(モルガン・スタンレーMUFG証券のチーフエコノミスト)は、解散総選挙の可能性を50%以上と見ている。