“日本は独自外交ができない” 対露追加制裁にロシア反発
日本政府は24日、ロシアのクリミア併合とウクライナ危機に関して、追加制裁を発表した。新しい制裁は、武器輸出の制限、日本にあるロシア国営銀行の証券発行の禁止などだ。今回の制裁は、3月、4月、8月に続いて4度目となる。
【日本、制裁をより厳しく】
日本は、既にロシアへ制裁を課している。4月、23人の露政府関係者などの入国ビザ発行を停止。ただ名前は公表されていない。8月には、ウクライナ情勢を不安定化させる事案に関係しているとみなされる、40の個人名と2つの組織名を発表。これらの日本での銀行口座を凍結するとした。
しかし、これまでの制裁では、主に個人を対象としたものだった。そのため日本政府は、ロシア政府との外交関係を維持したいがために、米欧の制裁よりも軽度の内容に止めようとしているとみられていた(ウォールストリート・ジャーナル紙)。
PHP総合研究所国際戦略研究センター長の金子将史氏は、「ロシアに対するインパクトはあまりないだろうが、日本が米国などの同盟国との協調を重視しているとのアピールになる」(ウォールストリート・ジャーナル紙)とみている。
ロシア外務省は日本の追加制裁に対し、「今回の非友好的な動きは、日本が自立した対外政策を行う能力がないことを示す明確な証拠と考える」「国外からの圧力のもと、制裁に賛同したことは、日本政府がなかんずく地政学上の立ち位置を損ない、経済界に間違ったシグナルを送ることになる」と声明を発表し、制裁があるうちは両国関係の発展は難しいとしている。
【北方領土問題と追加制裁】
追加制裁は、ロシア政府の要人が24日、択捉島の新空港を視察した直後に発表された。視察を行ったセルゲイ・イワノフ大統領府長官は、ウラジーミル・プーチン大統領の側近中の側近と言われる。
日本政府はすぐさまこれに反発。菅義偉官房長官は、「極めて残念だ」と述べた。
6週間前には、北方領土を含む海域でロシア軍が軍事演習を行い、日本外務省は「全く受け入れられない」と強く抗議した(ブルームバーグ)。
【個人的結びつきを壊さないよう配慮の安倍首相】
秋に予定されていたプーチン大統領の日本訪問は、ウクライナ危機で延期だろう。しかし、安倍晋三首相は、11月北京で開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)での会談にいまだ期待している、とウォール・ストリート・ジャーナル紙は報じている。
海外メディアはどれも、両首脳がこれまでに5回の会談を持ったことを報じている。NHKによると、プーチン大統領は21日、安倍首相の誕生日に電話で祝いのメッセージを送ったという。
安倍首相は、G7の制裁に協調しながらも、プーチン大統領との個人的な関係を維持する努力をしている、と海外メディアは報じている。また首相は1945年から争っている領土問題の解決を約束すると同時に、福島第一原子力発電所の事故によるエネルギー不足を補うため、ガスの輸入先を拡大しようとしている(ブルームバーグ)。
ここ5年で、ロシアは、日本にとって主要なエネルギー供給国となった。天然ガスの輸入では4番目、原油の輸入は5番目に大きな国だ。ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、日本政府は、制裁が長引けば、露企業の海外での資金調達がうまくいかなくなり、ロシアからの燃料輸出が難しくなるのではと恐れている、と指摘した。
安倍首相とプーチン大統領は21日、電話で会談し、11月のAPECなどの国際的な行事を利用して、話し合いを続けることで意見が一致。日本経済新聞によると、日露は今月、合同で海上救助訓練を行う予定だ。また、毎日新聞は、セルゲイ・ラブロフ外務大臣が、今週開催される国連総会に合わせて、岸田文雄外相と会談する用意があると話した、と報じた。
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