安倍首相の靖国参拝見送りは、中国への配慮か 保守主義との“微妙なバランス”を海外紙指摘
安倍晋三首相は、終戦の日の15日、靖国神社の参拝を見送った。代理を通じて、自民党総裁として、私費で玉串料を奉納した。代理を務めた自民党の萩生田光一衆院議員は、「国のために犠牲となった英霊に尊崇の念を持って謹んで哀悼の誠を捧げてほしい」(朝日新聞)、と指示されたという。
同日、古屋圭司国家公安委員長兼拉致問題相、新藤義孝総務相、稲田朋美行政改革相が、それぞれ靖国神社に参拝した。
安倍首相は昨年12月26日に、現職首相としては7年ぶりに靖国神社に参拝していた。これに対し、中韓は強く反発し、アメリカも「失望」を表明していた。
なお安倍首相は、千鳥ヶ淵の戦没者墓苑を訪問し、献花した。墓苑は、第2次世界大戦中海外戦没者の身元不明の遺骨を埋葬する為に1959年に建設され、昨年10月には、ジョン・ケリー米国務長官とチャック・ヘーゲル米国防長官も訪問、献花していた。
【日中関係改善への一歩か】
海外各紙は今回の見送りについて、中国の習近平国家主席との首脳会談を意識したのだ、と報じている。安倍首相が2012年12月に着任して以来、習国家主席との会談は実現していない。
日中の外務大臣は9日、東南アジア諸国連合(ASEAN)外相関連会合が開催されたミャンマーで、非公式に接触し意見を交換した。第2次安倍政権下では初めてのことだ。
北京大学国際関係学院の梁雲祥副教授は、「日中関係は最近改善へ向け勢いがついている。両国の外相同士が話し合いを行い、11月に首脳会談を実現させようと奔走している」(ブルームバーグ)と分析。同メディアは、11月の北京でのアジア太平洋経済協力会議(APEC)出席に合わせての会談に向け、事が進展している兆しだ、と評価している。
ロイターは、安倍首相が保守主義と中韓への配慮との間で、微妙で難しいバランスをとろうとしている、と報じる。ブルームバーグも、今回の参拝見送りで、安倍首相は、国家主義の支持者からは批判を受けるだろうが、日中首脳会談への望みを繋ぎたいのだろう、とみている。
【参拝見送りも中韓は不満】
ただ、中韓政府の日本批判はおさまらないようだ。
中国外務省の華春瑩副報道局長は、安倍首相の玉串料奉納や一部閣僚の参拝について「中国は断固として反対する」との談話を発表した(共同通信)。韓国政府も、「嘆かわしい」と非難する外交部報道官名義の論評を発表した(聯合ニュース)。
また中国国営新華社通信は、日本の戦争経験者の発言と比較するように、集団的自衛権の行使容認に賛成する日本の若者の発言を取り上げた。日本では8月15日が「終戦の日」であり、「降伏」「敗戦」といった言葉が使われないことなどもあげ、日本の若者が戦争に鈍感になっている、と懸念する論調だ。
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