“日本、中国を口実に軍備拡大”と中国反発 防衛白書に抗議も、具体的反論はなし
防衛省は5日、2014年版の防衛白書を発表した。白書は全506ページで、そのうちの20ページは中国に関する記述だという。安倍政権下での防衛方針転換後、初めてとなる安全保障に関する報告だ。
【厳しさを増す安全保障環境、自衛隊の役割に期待】
白書では、北朝鮮、中国、ロシアの脅威を指摘。厳しさを増す安全保障環境に対処するため、防衛力の向上が必要だとしている。
内容は現政権の見解を繰り返したものだ。武器輸出や自衛隊が日本国外で同盟国を助け戦闘を行うことなど、これまでの政権が平和憲法のもとでは無理だとしてきたことも含まれている(フィナンシャル・タイムズ紙)。
昨年の防衛白書は、中国が防空識別圏(ADIZ)を設定する前に発表された。今回の報告では、ADIZについて、「東シナ海における現状を一方的に変更し、事態をエスカレートさせ、不測の事態を招きかねない非常に危険なものだ」と強い懸念を示した。また「公海上空における飛行の自由を妨げるような一切の措置の撤回を求めている」と設定自体の撤回も求めている(朝日新聞)。
小野寺五典防衛大臣は白書に関して、安倍政権が懸念しているのは、「日本周辺の安全保障環境の深刻さが強まっていること」で、「国民の命、財産、土地、そして海と空を守るため自衛隊の活動の重要性が増している」と強調した(ウォール・ストリート・ジャーナル紙)。
【軍事費の増加は仕方なし?】
フィナンシャル・タイムズ紙は、「武器輸出三原則」が、高額な最新兵器を開発するための国際的な開発に日本が参加することを妨げていた、と指摘。白書では、武器輸出と開発について、「防衛装備品の高性能化を実現しつつ、費用の高騰に対応するため、国際共同開発などに参加することが主流となっている」としている。
政府は4月、防衛装備の海外移転に関して、武器輸出三原則に代わる新たな原則として、「防衛装備移転三原則」を策定した。
日本の防衛予算は2012年度まで10年連続で減少していたが、防衛力強化をめざす安倍政権になってから、2年連続で増加している。2013年度は0.8%の増加(前年度比)、2014年度は2.8%増の4兆8848億円だった。
【日中首脳会談を妨げるのではないか】
新華社通信によると中国の国防部は白書の内容に対し、日本が事実を無視し、根拠のない言いがかりをつけ、自らの軍拡のために意図的に中国の脅威を利用しているとし、「断固として抗議する」と強く反発している。
また、「中国の脅威か日本の脅威か?」と題する新華社の別の社説では、防衛白書への批判を試みている。しかし、自国の軍備拡張には触れず、日本の集団的自衛権容認や防衛費拡大をあげつらっているのみで、日本の防衛白書への具体的な反論はない。
安倍晋三首相は、11月に北京で開催される「アジア太平洋経済協力会議(APEC)」で、習近平国家主席との会談に意欲を示している。実現すれば、2012年からの尖閣諸島領土問題の対立後、初めての日中首脳会談となる。しかし、フィナンシャル・タイムズ紙は、今回の報告の中で安倍政権が中国に対して示した強硬な姿勢は、会談にむけての努力を阻むことになるだろう、とみている。
菅義偉官房長官は4日、福田康夫元首相が7月に中国を訪問した際、習主席に安倍首相の伝言を渡したという報道を否定した。しかし、首脳会談開催は望ましいと、前向きな姿勢を示した(ウォール・ストリート・ジャーナル紙)。