安倍首相、ブラジルで「新しい章を始める」と熱意 日本企業は慎重姿勢 温度差を海外報道
中南米歴訪での最後の訪問国ブラジルで、安倍首相はジルマ・ルセフ大統領と会談し、幅広い分野で協力していくことに合意した。ブラジルとのビジネス拡大を狙う安倍首相だが、課題も多い。
【影響力を再び】
ブルームバークは、1950年代にブラジルで製鋼などの産業創設を援助し、他に先駆けて鉄鉱石の買い付けを始めたのは日本であったと紹介。現在は最大の貿易相手国を中国とするブラジルで、再び影響力を取り戻そうと、安倍首相が関係強化に努めていると述べる。
首都ブラジリアとサンパウロには、トヨタ、新日鉄住金、三井住友フィナンシャルグループなどの代表が安倍首相に同行した。同行者の一人、双日の加瀬会長は、様々な産業を持つブラジルは日本にとって重要だと述べ、「大きな可能性を持った国だ」と評した(ブルームバーグ)。
安倍首相とルセフ大統領は、日本がブラジルの農業ビジネスと深海油田開発に700億円の融資を行うことに合意。また、最近ブラジルで復活を遂げている造船業における協力強化のための2国間協定にも調印した(スペインEFE)。
【失われた時間】
安倍首相はブラジルでの会見で、「この外遊を日本とこの地域との関係の新しい章を開くもの、いっそうの協力の時と捉えている」と述べ、15年間のデフレの穴を埋めるべく、中南米での貿易や投資の拡大を約束した(ロイター)。
しかし、資源ナショナリズムの高まる今、中南米におけるエネルギーや鉱物などにアクセスするためには、日本は中国やロシアと競い合わねばならない。中露が参加するBRICsは、7月に新開発銀行の設立と外貨準備基金の創設を発表しており、会見の場では、日本の影響力が弱まるのではという質問も挙がった(ロイター)。
【課題も浮き彫りに】
元ブラジル貿易相のフルラン氏は、自動車やエレクトロニクスの分野ではヨーロッパや韓国の企業が好調で、近年は日本の地盤は揺らいでいると話す。同氏はブラジルで操業している日本の自動車会社4社の生産台数を合計しても、フィアット、フォルクスワーゲン、GM各社のそれには及ばないと言い、エレクトロニクスの分野では、すでに中国や韓国の企業がリーダーとなっていると述べている(ブルームバーグ)。
一方、ブルームバーグは、中南米での経済の減速と投資家の信頼の悪化も指摘。さらにエネルギーも含め、ブラジルでの各種コストは非常に高いこと、中南米諸国のGDPが、2013年の2.3%から今年は1.5%に低下すると予測されることを挙げ、課題も多いことを示唆している。
トヨタの内山田会長も、「ブラジルは成長するべき市場だと信じてはいるが、経済がこのまま停滞するようでは、投資を続けることは難しいだろう」と述べ、慎重な見方を示した(ブルームバーグ)。