中国の台頭は日本にとってチャンス? 安倍首相の成長戦略を後押しと英誌指摘

 24日に閣議決定した「成長戦略」について、海外メディアが各紙見解を繰り広げている。その内容は、賛否両論となっているようだ。

【高い評価の英誌】
 英エコノミスト誌は、安倍首相の成長戦略を「日本が変わる、ここ数年で一番のチャンス」と評している。

 同誌は安倍首相の成長戦略を後押しする要因として、3つの点を挙げている。まず1つは、日本の人口形態の変化だ。高齢化が進み労働人口が減少する中、今まで外国人や女性の進出を嫌っていたエリート層ですら、移民の受け入れや女性の社会活用を検討し始めている、と同誌は述べている。農業改革への強固な反対も、農家自体が高齢化していることから、その抵抗も農業人口の減少とともに減っていく、と指摘する。

 2つめは、20年に渡る景気低迷により、日本企業の外国による持ち分が増えたことだ。日本で正社員は余剰状態にあってもいまだ解雇はされず、保護も手厚い。その一方日本の非雇用者の5分の2は不安定で低賃金なパートタイム労働者で、その多くは若者や女性である。外国の投資家は、そうした日本の雇用システムに改革が急務と考えているという。

 3つめが、中国の台頭だという。有権者は中国へ備え立ち上がることが必要と気づいており、それは醜いナショナリズムへと繋がるかもしれないが、同時に経済改革の緊急性を高めている、と同誌は述べている。

 安倍首相の改革案はこれまでの首相と比べるとずっと重みがあり、岩盤規制への踏み込みを発表後も支持率は依然高い、と同誌は伝える。障壁はいろいろあるが、安倍首相は進まなくてはならない、とその方向性を評価しているようである。

【障壁を指摘する独メディア】
 ドイツのメディア『ドイチェ・ヴェレ』は、成長戦略の方向性は概ね評価しつつも、実行への壁は厚いとの見解であるようだ。

 ウッドロー•ウィルソン•センターの後藤志保子氏は、移民の受け入れや女性の社会活用に関し「共働き社会や移民の受け入れに際し欧米社会が直面した困難に日本も陥るのではという恐れがある」と同メディアに語っている。

 日本人の多くは、変化を受け入れるよりも現状を維持したい考えだ、と同メディアは伝える。後藤氏は「構造改革は日本人が受け入れなければいけない苦い薬」と述べる一方「その緊急性を有権者に訴えるのは難しいかもしれない」との見解を示している。

【真っ向否定の米誌】
 一方、安倍首相の成長戦略を真っ向から否定するのはフォーブス誌のステファン・ハーナー氏だ。

 改革案の大部分は「実施が随分先か、効力に欠けるか、あるいは瑣末なもの」で、「法人減税や原発再開、JA全農の改革などインパクトのある案は、強固な反対にあうこと必至で、あるいはまったく実現できない可能性すらある」と同氏は述べている。

 しかし本当の問題はそんなことではないという。そもそも「政府の介入で解決を図ろうとしていることが問題」というのがハーナー氏の主張だ。同氏は「政府がやるべきことは、解決を人、企業、市場に委ね、自身は身を引くこと」と語っており、マクロ視点による策の限界を強く訴えている。


外国人とも話が弾む…意外な人気の日本文化を知る、電子書籍が遂に発売

世界が惚れたクール・ジャパン34選 [Kindle版]

NewSphere編集部
Amazon.co.jpで詳細を見る

Text by NewSphere 編集部