「日本は自国と米国を防衛すべき」海外識者が主張 “不毛”な尖閣めぐる日中対立を危惧

 集団的自衛権の行使容認に向けた動きなど、安倍首相の安全保障政策強化について、海外各紙が論評を繰り広げている。

【中国への拮抗勢力となることこそ日本の役目?】
 日本は20年以上にわたる景気低迷により、アジアでの影響力が下がり、国際社会での自国の立ち位置に迷走してきた、とウォール・ストリート・ジャーナル紙(ウォール紙)は述べる。一方中国は、世界第2位の経済大国に成長し、非民主主義の台頭という懸念を周囲にもたらした。

 そんな中、安倍首相は「中国への拮抗勢力」という役割に活路を見出したようだ、と同紙は指摘する。失敗すれば軍事衝突へと繋がるかもしれないリスクがあるが、その分、大変身のチャンスへの賭けだという。

 集団的自衛権の行使容認は、世論の反対が最大の障壁となっている。国外での反対は特にアジアが多く、その理由は主に第二次世界大戦の名残によるものだとロイターは指摘する。同盟国の米国は、集団的自衛権の行使容認を支持している。しかし、安倍首相を「反米趣向」と見る向きからは反対があるという。

 それでも「北朝鮮や中国の脅威に理解が得られれば賛成される」と安倍首相は見ているようだ、とウォール紙は述べる。安倍首相は日本の行いが国際法を遵守したものであることを強調しているが、これはもちろん、中国の行為が違法であることへの示唆だという。

【アメリカの思惑】
 米政府の意向を後押しすべく、経済戦略研究所のクライド・プレストウィッツ氏が「日本にアメリカの防衛に協力させ、そして自身も自衛させるべき」という主張を、ロイターのコラムに寄稿している。

 同氏によると、戦争への参加を放棄させた憲法は、当時アメリカの外交政策に都合がよかった。口うるさい同盟相手に頼るよりは、日本をアジア太平洋地域の貴重な基地として使い、直接アメリカが仮想敵国に防衛を張るほうが良策だった。さらに、アメリカが世界のGDPの50%を占め、アジア太平洋地域の軍事優位が確固たる状態で、日本とアメリカの利害が概ね合致していた時代には、正しい方針であったという。

 しかしそんな時代は終わった。いまやアメリカのGDPは世界の22%まで下がり、軍事勢力図も景色を変え、また日本とアメリカの利害もずれつつある。現在日本と中国は尖閣諸島をめぐってもめているが、この不毛な岩は戦略的にも経済的にもアメリカになんの価値もない。それでも米政府は、このことで戦争になれば同盟協定のもと参加することになる。これではとても国益にそぐわない、というのが同氏の主張である。

【日本の課題とは】
 アメリカも支持する集団的自衛権だが、安倍首相のアジア勢力再編への取組みは始まったばかりで、その成功は日本国内の経済成長にかかっている、とウォール紙は分析する。経済が低迷したままでは防衛費を拡大する予算もないし、中国にかわる政治的選択肢としての説得力もないからだ。

 5回の景気後退を含む20年以上の経済成長低迷により、もはや誰も日本を経済帝国とは見ていない、とブルームバーグは指摘する。しかし日本の「移民や異文化の流入を嫌う独自の性質」が、外国資本や外国人労働者を必要とするアベノミクス政策にとって妨げとなっていると同誌は述べる。この日本独自の傾向への対策は、急速に高齢化と人口縮小が同時進行する以上避けられない重要な課題、と同誌は指摘している。

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Text by NewSphere 編集部