“平和に寄与する”武器輸出認める新原則決定 しかし中国の“日本=軍国化”批判を助長と海外報道
政府は1日、武器輸出を事実上禁止してきた「武器輸出三原則」に代わる、新たな「防衛装備移転三原則」を決定した。新原則では、救助、輸送、地雷除去などの“平和利用”であれば、巡視艇や地雷探知機などの装備輸出や、防衛機器の共同開発への参加などが可能だ。
海外・日本両メディアとも、この動きを安倍政権の政策の目玉の一つとして注目している。
【平和利用目的の装備品やライセンス生産品の輸出が可能に】
「武器輸出三原則」は、1967年、佐藤内閣が当時の「仮想敵国」であった共産圏への武器輸出を禁じ、76年の三木内閣で事実上全面的な輸出禁止に拡大した政策を基本とする。法律で明文化されたものではなく、その後も時々の情勢変化に応じ、計21件の例外を設けつつ、案件ごとに是非を論議しながら運用されてきた。
今回は、38年ぶりの抜本的な見直しとなる。NHKの報道によると、礒崎陽輔首相補佐官は、「増築部分がかなり増えて家の形がだいぶおかしくなってきた。それを整理・合理化して建て替えさせてもらいたい」と、先日の公明党の会合で趣旨を説明したという。
新原則では、これまで例外化措置で認めてきた案件が正式に「輸出可能なケース」となる。さらに、「国連や化学兵器禁止機関への装備品輸出」、「米国のライセンスを受けて生産した国産部品の対米輸出」、「相手国への貢献度が相当程度小さい部品・技術の輸出」などが新たに可能になる。また、目的外使用と第三国への移転については、輸出相手国へ日本の事前同意を義務付けるとしている。
逆に輸出を禁じるのは、(1)日本が締結した条約等に基づく義務に違反する場合、(2)国連安全保障理事会の決議に基づく義務に違反する場合、(3)紛争当事国への移転となる場合、の3つに当てはまるケースだ。
【海外報道は「防衛産業の強化が主な狙い」】
ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、「自国の防衛産業により大きな役割を与えようという安倍首相の政策」と、政府発表を伝えた。ただし、新原則は、あくまで「平和と国際協力に積極的に寄与する」ために一部の武器輸出を認めるものであり、「単なるビジネス目的での輸出は行われない」とも併せて報じている。
ロイターも、安倍政権の狙いは「同盟国との結びつきと国内の防衛産業の強化」だと報じる。まず、これまでの「武器輸出三原則」は、「三菱重工、川崎重工、IHIのような防衛企業を事実上海外市場から閉め出していた」と解説。新原則下でもそれが劇的に変わることはないものの、船のディーゼルエンジンなど国際的競争力の高い日本製部品については「ライバル国の製品と並び立つかも知れない」と予想する。
また、この動きは、「日本は軍国主義に向かっている」という中国の日本批判を助長するともロイターは論じている。
【ODAの軍事目的使用も 朝日は「中国への対抗策」と報じる】
朝日新聞は1日付で、安倍政権が途上国援助(ODA)でも、軍事目的使用を禁じた規定の見直しに入ったと報じた。
1992年に定められたODA大綱は、ODAによる物資を支援国の軍に提供したり、ODAで建設した道路や空港を軍が使うことを原則的に禁じてきた。人材育成の分野でも、軍人はODAの対象としていない。2006年にはODAでインドネシアに巡視艇を提供したが、これには海賊対策という名目がつけられた。
朝日は、「ODAの軍事利用が認められれば、南シナ海で中国との領有権問題を抱えるフィリピンやベトナムでODAを使って港や空港を整備し、両国などの軍が使用できるようになる。中国を牽制する狙いもあるとみられる」と、根底に中国への対抗策があることを強調する。報道によれば、安倍政権は年内の閣議決定を目指しているという。
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