ケネディ大使の言動、日本の保守層を刺激? 政権内部からネットまで、反発に海外紙注目

 6日、アメリカのケネディー駐日大使はNHKとのインタビューに応じ、アメリ政府が「失望」を表明した安倍首相の靖国神社参拝問題に関して、「地域情勢を難しくするような行動は建設的ではない」と述べた。

 これに対して、菅官房長官は7日、「首相は恒久平和、戦争のない国を築き上げたいという思いで参拝した。その思いを謙虚に誠実に説明し、理解を求めていきたい」と述べたとフィナンシャル・タイムズ紙は報じている。

【ケネディー大使によるイルカ漁批判】
 11月の就任以来、ケネディー大使はいろいろとトラブルを起こしてきたと同紙は述べる。1月18日、大使はツイッターで「米国政府はイルカの追い込み漁に反対します。イルカが殺される追い込み漁の非人道性について深く懸念しています」と発言したのだ。

 これについて、大使は2月に鹿児島県を訪れた際に名物の黒豚を食べたいと発言し、「イルカはダメなのに豚はいいのか」と一部ネットが炎上する騒ぎとなった。

【安倍首相に近い人々の発言】
 菅官房長官は首相近辺の人々の中では如才ない方だとし、フィナンシャル・タイムズ紙はアメリカ政府の「失望」にコメントした人々の例を挙げている。

 衛藤晟一内閣総理大臣補佐官は「失望したのはわれわれの方だ」とユーチューブにアップし、削除を命じられた。自民党の萩生田光一総裁特別補佐は、17日に党本部で行った講演で、「共和党政権の時代にこんな揚げ足を取ったことはない。民主党政権だから、オバマ大統領だから言っている」と述べたという。

 ただ同紙は、このようなコメントについて、日本の保守層がうっぷんを晴らすものと見ており、日米関係に深刻な断裂をもたらすものとはとらえていないようだ。

【日米防衛協力ガイドライン改定でも温度差】
 一方、ロイターは、10日にハワイで日米の外務・防衛当局実務者級会合を行うことになっている自衛隊と米軍の役割分担を定めた防衛協力の指針(ガイドライン)の改定をめぐっても、日米間で温度差が生じていると報じている。

 日本は、中国との尖閣諸島をめぐる紛争に焦点をあてたいのに対し、アメリカは中国に限定せず、もっと幅広い議論をしたいからだ。「日本は対中国を優先的に扱い、平時とも有事とも判断がつかない『グレーゾーン』にある事態が発生した時の、両国の役割を明確化したいのだ」と日本のある官僚は述べる。漁師を装った中国の特殊部隊が尖閣諸島を占拠するようなグレーゾーン的事態が発生した場合、日本としては自衛隊と沿岸警備隊や警察との間で、漏れのない役割分担ができるかという問題もある。

 ロイターは、グレーゾーン的事態が発生した時、アメリカは諜報と偵察を行うだろうというアメリカ当局者の言葉を紹介している。彼によれば、今回のガイドラインの見直しはこの領域での協力強化と「グレーゾーン的状況における海域での警戒に議論が集中するだろう」という。

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Text by NewSphere 編集部