安倍首相の“野望”か 欧米メディア、日本の教科書指針改訂に注目する理由

安倍首相

 文部科学省は28日、中学と高校の学習指導要領解説書を改訂したと発表した。尖閣諸島と竹島を日本固有の領土だと明確に教科書に記述し、指導するよう求めている。

これに対し、中国と韓国は激しく反発。一方、下村文科相は、「子供たちに自国の領土について教えるのは自然なことだ。両国に対しては、丁寧に我々の立場を説明し、理解を求めなければならない」と記者団に話した。

欧米メディアも、今回の改訂を東アジアの新たな火種ととらえ、盛んに報じている。

【中韓は猛反発】
 韓国外務省はすぐに、“日本がまた独島に関してガタガタと事実無根のクレームをつけ始めた。成長過程の世代に嘘を教えようとしている”という旨のコメントで怒りを表明。日本の駐韓大使を呼び出し、撤回を求めた。なおこの際、男が大使の車に突進してきたと伝えられている。

 中国外務省は、「日本は挑発をやめ、若い世代に正しい歴史認識を教えるべきだ」「釣魚島が中国領であるという基本的な事実を変えることはできない」などと非難している。

【安倍首相の野望との報道も】
 フィナンシャル・タイムズ紙は、日本政府が、中韓と領有権を争う島々について、「より国粋主義的な表現」を使うよう命じた、という強い表現で一連の動きを報じた。

 同紙は、安倍首相の悲願は、いわゆる「日教組教育」を排除し、「愛国的な教育」を実現することだと報じる。英ガーディアン紙も、今回の改訂は、自虐史観を改め、子どもたちの愛国心を育てようという「安倍首相の野望」を反映しており、日本と中韓の関係をさらに悪化させるものだと厳しい姿勢だ。

 同紙はまた、新しい学習指導要領は、これまでになく政府の公式見解を強く反映したものだとしている。それによって、「従軍慰安婦問題や南京大虐殺を含む戦時中の残虐行為」が、学校教育の現場で水面下に追いやられるだろうと、批評家たちの見方として伝えている。

【NHK新会長発言も安倍政権の意向を反映?】
 ガーディアン紙は、文科省の発表が、NHK新会長の籾井氏の発言の数日後であり、それが中韓の怒りを増幅したという論調で記事を結んでいる。

 またフィナンシャル・タイムズ紙は、首相が、NHK人事に政治的意向を働かせたことを示唆している。

【安倍首相は関係改善努力を表明】
 一方、ブルームバーグは、日本が中韓との関係改善に努めている点にもスポットを当て、文科省の発表の数時間後にあった安倍首相の国会答弁を紹介した。

 首相は、中韓へコンタクトを取る努力を続けており、両国が呼びかけに応じることを望むと述べた。実際、先週のダボス会議で韓国高官と挨拶を交わし、中国とは海上での衝突を避けるための仕組み作りを進めていることを付け加えた。

Text by NewSphere 編集部