“中国と並ぶのは無理” 中国紙が日本のアフリカ外交を批判
安倍首相は9日から15日の日程で、中東のオマーン、アフリカのコートジボワール、モザンビーク、エチオピアを歴訪する。安倍首相は出発前の記者会見で、「アフリカは日本外交にとってフロンティアと言えると思う。そしてまた中東は日本にとって戦略的に極めて重要であるし、安全保障上も重要だ」とコメントした。
【なぜオマーンを最初に訪問したのか?エネルギー産出国との関係の重要性】
首相が最初に訪問した中東オマーンは、ペルシャ湾岸諸国の中で特異な立場にある。頻繁に閉鎖されるホルムズ海峡を利用しない石油やガスの供給方法を所有し、同海峡で問題が生じた場合、地上ルートで湾岸諸国から外への運送が可能なのだ。
安定してエネルギーを輸送できる国であるとともに、イラクと西側諸国との関係改善を影から支える国でもある。ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、このため、エネルギー産出国との関係の重要性を示し、資源を確保するためにも、首相は訪問する必要があったと分析している。
【アフリカ訪問では支援と投資呼びかけ予定】
アフリカ諸国最初の訪問国となるコートジボワールは、3億人を擁する西アフリカ市場の中心になると考えられている。首相は、平和と安定のため最大限支援する意向を示す予定だ。
さらに天然ガスや石炭などのエネルギー資源が豊富なモザンビークでは、日本企業の参入が拡大しており、さらなる投資を呼びかける予定だという。またエチオピアでは、日本のアフリカ諸国への今後の援助政策などをテーマにした首相演説が行われる。
【背景には中国の影響力拡大】
資源を安定的に確保し、市場を開拓することが、今回の歴訪の主な目的と報じられている。背景には、アフリカ諸国における中国の影響力拡大があることを無視できない。
ウォール・ストリート・ジャーナル紙、AP通信ともに、日本は政権不安が長く続いたために外交がおろそかになり、その間に経済的、政治的にも中国の影響力がアフリカ諸国で拡大したと報じている。今回の訪問で、日本への信頼回復と影響力の拡大を目的としている、との見解を掲載した。
【中国の反応】
一方、中国では日本の政権不安がアフリカ諸国への影響力低下の原因と捉えていない。人民日報傘下のグローバル・タイムズ紙は、「2000年に中国アフリカ協力フォーラムが開催され、アフリカ大陸と中国の関係が急速に発展したのを機に、日本はアフリカに注目し始めた」と報道。中国とアフリカ諸国との関係は60年におよぶが、日本とアフリカ諸国との関係は日が浅いと断じている。
日本は2008年までアフリカに対する外交戦略を持たなかったとして、「短期間で中国と肩を並べるのは無理だ」というアナリストのコメントを掲載。日本より中国の方がアフリカ諸国との関係は長く、確固たるものだという考えを打ち出している。
こうした強気な姿勢の一方で、安倍首相の歴訪に先立って、エチオピアで会合を行った中国外相は「アフリカ諸国との偏狭な協力関係のもとで行われる援助は、政治的な利益や、対抗勢力に対抗するために行われることだ」と、暗に日本政府を批判、けん制するコメントを発表している。