日中の駐英大使、両国を「ヴォルデモート卿」呼ばわりで批判合戦

 英デイリー・テレグラフ紙にて、2日、劉暁明駐英中国大使が、日本を「ヴォルデモート卿」(人気小説「ハリー・ポッター」の悪役)に例えて批判した。靖国神社を、「分霊箱」(ヴォルデモートが魂を保存するために悪用した物)と称し、昨年末行われた安倍晋三首相の靖国神社参拝を激しく非難した。

 その翌週、6日の同紙にて、林景一駐英日本大使が「中国こそヴォルデモート卿になりうる」と反撃。

【靖国=軍国復活?】
 劉駐英中国大使は、テレグラフ紙に寄せた論説において、靖国神社は「軍国主義の象徴」であり、参拝は軍国主義復活の兆しと主張した。「これは日本だけの問題ではく、また日中、日韓だけの問題でもない。周辺地域の安全における日本の信用にかかわることである」と非難し、「戦犯」が祀られている神社への参拝を不快と評した。

 また同氏は、靖国参拝を「謝罪する意思がないことの表れ」と主張。安倍首相が平和と対話の重要性を訴える一方で、具体滝な行動は何もしていないと批判。「かつての過ちについて、謝罪しないどころか美化している」と断じた。

 さらには「第二次大戦中、イギリスと中国は同盟国だった。共に戦勝国で、戦後の国際社会に貢献してきた。今後も世界の平和を守るため共に努める責務がある。日本の軍国復活を防ぐため互いに協力することが必要だ」と英世論に訴えた。

【どっちがヴォルデモート?】
 翌週の今月6日、それを受けて今度は同紙にて、林景一駐英日本大使が反撃。中国はアジア太平洋地域において強制的に情勢を変えようとしていると述べた。

 同紙によると、林大使は「中国は日本の領海を何度も侵犯しており、かつ一方的に防空識別圏を設定してきた。そんな行いにもかかわらず日本は対話の継続を望んでいる。これが劉大使が言うような軍国主義か?」と発言。また「年々軍事費を拡大してきた国に“軍国”呼ばわりされるとは皮肉なことだ」とも述べている。さらに、靖国参拝が戦犯を崇めるものではないことを主張。安倍首相の参拝は恒久平和を誓うものであり、国籍関係なく戦争で命を落とした人を慰霊する「鎮霊社」をあわせて訪問した点も強調した。

 最後に同氏は「中国は違う見方をしているのだろう。だからこそ対話が必要。安倍首相は真意を説明する意向がある」と述べ、「中国に道は2つ。話し合い、法に従うか。あるいはヴォルデモート卿になり状況を悪化させるか。答えは明確なはずだ。存在しない70年前の軍国主義の亡霊を探してもどこにも進まない」と締めた。

【他国はどう見る中傷合戦】
 英ガーディアン紙は、安倍首相の靖国参拝は「近隣諸国を怒らせた」と報じている。安倍首相は中国と韓国に参拝の真意を説明したい意向だが、対談の実現は望み薄とも見ている。

 また同紙は、日中関係の悪化がアメリカにもたらす懸念についても言及している。ヘーゲル米国防長官が安倍首相の靖国訪問を「失望」と表明し、日本に対し近隣国との改善関係に努めるよう促したことについても触れ、世界第2位と第3位の経済国同士がいがみ合うことの影響を指摘した。

Text by NewSphere 編集部